『___________________』【ぬら孫】 (ページ20)

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第十八幕ページ20

入学早々から自分の妖怪に対するイメージを語り、妖怪を知らない子供たちから嘘つきのレッテルを貼られたらしい。

それでも、自分には見えると言い張るものだから不気味に思った生徒が先生に言いつけた。
それは保護者を呼び出すまでに発展したのだそう。

以降、病院に連れていかれたりクラスの男子から揶揄われたりと肩身の狭い学校生活を送っていた。

破天荒な性格もあってか妖怪好きの変人として、〝妖怪ちゃん〟と命名された。

〝妖怪のことは二人の秘密だからね〟

リクオはあの日の約束を思い出す。

(あれは姉ちゃんが経験したことをボクも同じ目に合わないようにするためだったのか…)

誰も信じてくれないという悲しさ、はっきりと目に写るのに皆には理解されないというもどかしさ。
リクオはそれをつい先日知ったばかりだ。

そう思うと彼女には頭が上がらない。

リクオにはAがいた。
しかし、彼女には人間の規律として教えてくれる人が誰もいなかったのかもしれない。

さらに最近まで幼児だった子どもたちはお化けなどの恐怖に対して拒絶反応が強い。
彼女の話は到底受け入れられないだろう。
…タイミングが悪かったのだ。

「妖怪ちゃんなんて…誰が言ったんだよ。
カナちゃんが会った男子、絶対主犯者だよ！」

《あ、うん。
何かそうみたいだよ？》

「やっぱり！！」

腹の底から沸々と怒りが湧いてくる。

《でも、その男子はそう呼んで〝喰ってやろうかー！〟って言いながらずっとお姉ちゃんに追いかけられてたんだって。
それがあまりにも怖いからその渾名も長くは続かなかったみたい。》

「ああ…うん。そうなんだ。
姉ちゃん、足速かったからね…。」

先ほどの怒りとは別にその男子が不憫に思えた。
確かにクラスでは浮いていたのかもしれない。
しかし、全員がAを敵視していたわけではないとリクオは思う。

ちょっと変なところを抜けば、彼女は人から好かれ、親しまれやすいタイプだ。

かつてのカナと自分もそうだったように、彼女の人柄の良さに心を開いた人も多くいたであろう。

「そっか…ありがとうカナちゃん。
それじゃあまた明日。」

《うん、また明日。》

ガチャリと通話を切った。

リクオは羽織りを着て、夜空に浮かぶ三日月を見上げる。
今頃、姉ちゃんも同じ月を見ているのだろうか。

「姉ちゃん、みんな待ってるよ…。」

月に向かってそう呟いた。

_____そして、あれから四年の月日が流れた。