天河原中にて ページ8
〜貴方side〜
次の日は土曜日で、学校はお休み。
しかし私は天河原中サッカー部のマネージャーを務めているため、練習があれば休みの日でも学校に行く。
今日は午前中のみの練習だったので、午後から稲妻町へ向かうことにした。
それにしても………
貴方「練習お疲れ様でした! ちゃんと水分補給してくださいね!」
午前中の練習メニューを終えた部員たちが戻ってくると、他のマネージャーと一緒に一人ひとりにドリンクを渡していく。
みんなお礼を言いながら受け取るのだが、その表情は一様にどことなく暗い。
それだけではない。今日の練習……至っていつも通りの練習メニューをこなしていたはずなのに、何だかみんな調子が悪かった気がする。集中力も明らかに欠けていた。
他のマネージャーもみんな気付いていて、部員たちを心配している。
貴方「はい、喜多くん」
サッカー部キャプテンの喜多くんにドリンクを手渡すと、喜多くんは「ありがとう」と微笑んで受け取った。
かっこよくてモテる喜多くんだけど、今日はその微笑みさえも影が差している。
貴方「あのさ喜多くん。今日のみんな、いつもより調子が悪そうだったよ。もしかしてなにかあった?」
心配のあまりつい尋ねてしまう。
すると喜多くんは自覚がなかったのか、私の言葉に驚いて少しだけ目を見開く。他の部員たちの方を振り返り、そしてすぐに私の方へ向き直った。
喜多「すまない。情けない姿を見せてしまった」
貴方「ううん気にしないで! でも心配だよ」
喜多「………」
喜多くんは俯いて黙り込んでしまう。いくら心配でも触れるべきではなかっただろうか。
部員たちのただならぬ雰囲気に、私も落ち着かなくなる。少しの間が空いた後、喜多くんはゆっくりと話し始めた。
喜多「部員みんな……ショックな話を聞いたんだ。
Aは覚えているか? ホーリーロードの全国大会で、雷門を応援していた時のことを」
貴方「? うん」
雷門中サッカー部。
戦略的な面で選手を導く神童拓人とは別に、もう一人、仲間を導く存在がいた。
彼がいたから、雷門はホーリーロードで優勝し、サッカーはフィフスセクターの支配から解放されたといっても過言ではない。
彼の名は松風天馬。革命という名の風をサッカー界にもたらした少年として、革命に乗った天河原中も彼の活躍を見守っていた。
喜多「その松風天馬が____
今、稲妻町で行方不明になってしまっている」
・
7人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サリア | 作成日時:2020年2月6日 21時