噂話２ ページ7
〜貴方side〜
三つ目の“噂”。
それは、自分が何を願って魔法少年になったのかを忘れてしまっている男子生徒がいるというものだった。
願いにまつわる具体的内容、人物、それらに関する記憶がすっぽりと抜け落ちてしまったという。
そして不可解なのは、願いを聞き届け叶えたはずのキュゥべえまでもが忘れてしまっているという点。
これもまた原因不明で、あまりにも不可解な事態なのでその話はあっという間に知れ渡った。
その話を聞いた瞬間、私は心臓が跳ねた。
＿＿なぜなら、今の私の状況とまったく同じだったから。
真子には明かしていないが、私もまた、自分が何を願って魔法少女になったのか忘れてしまっている。本当に何ひとつ覚えていない。
命懸けで戦うことになっても構わないと、そう思えるだけの願い事があったはずなのだ。それなのに忘れてしまった。その部分の記憶だけが綺麗さっぱり消えてしまった。
キュゥべえにいくら尋ねてもわからないままで、モヤモヤとしたものを抱えながら戦ってきた。
＿＿＿自分はなぜ戦っているのだろう？
＿＿＿街の人々を守るため。それは間違いない。けれどそれだけじゃなかった気がする。
＿＿＿誰かのためだったのか、自分のためだったのか。それだけでもいい。思い出したい。知りたい。
貴方「その人は、どこの学校の生徒なの？」
真子「雷門中って聞いたよ。ほら、サッカーで有名な。本当にそこの生徒なのかどうかは断言できないけどね」
貴方「そうなんだ〜。いろいろ教えてくれてありがとう。少し興味が湧いたよ」
真子「ちょっと、行くなら気をつけてね！？ さっきも言ったけど、今の稲妻町は変なんだから」
心配してくれる真子に大丈夫だよと笑いかけ、日も暮れたので私たちは別れた。
キュゥべえ「どうやら、君だけじゃないみたいだね」
真子の話を一緒に聞いていたキュゥべえが、テレパシーで私にそう話しかけてきた。
キュゥべえ「君のように自分の願いの姿を見失った魔法少年が、稲妻町にいる。
どうするんだい？ もしかすると、会えば手がかりが掴めるかもしれないよ」
そんなことは、わざわざ言われなくてもわかっている。私の心は決まった。
貴方「………うん。私、会いたい。
その、願い事に関する記憶を失ったっていう魔法少年に」
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作者名：サリア | 作成日時：2020年2月6日 21時
