【イナGO】魔法少年少女の戦い (ページ47)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:14,734 hit

剣城の願い事ページ47

～剣城side～

喫茶店で会った時の先輩たちの表情は険しく、深刻そうだった。

でもそれは、無理もない。霧野先輩と倉間先輩が化け物に巻き込まれてしまったかもしれないのだから。

俺は2人を見ていて、ふと思うことがある。

記憶を失って、自分がどんな望みをかなえてキュゥべえと契約したのか覚えていないのに……戦い続けることができるのはすごいなと。

俺だったら……わけもわからないまま命を危険に晒して戦えなんて言われたら、果たしてできるかどうか。

そう、俺は自分の願いを覚えているからこそ、こうして戦っていられる。

＿＿＿兄さんの足を治す、という奇跡を起こすことができたから。

だからどれだけ命懸けの戦いになったっていい。

それで兄さんが、昔みたいに自由にサッカーをすることができるようになったのだから。

『僕は君の願いを、なんでもひとつだけかなえてあげる』

フィフスセクターに逆らうと決めた、帝国戦の後。

病院を訪れた俺の目の前に突如現れた白い妖精は、突然そんなことを言い始めた。

『なんだって構わない。どんな奇跡も起こしてあげられるよ』

剣城『……なんでも？本当にどんなことも？

＿＿＿＿例えば、最先端の医療でなければ治せない怪我をすぐに治す、なんてこともできるのか？』

藁にもすがる思いでそう尋ねると、妖精……キュゥべえは声音を変えることなく肯定した。

キュゥべえ『もちろん可能さ。君が望みさえすればね。

ただし、それと引き換えに出来上がるのが“ソウルジェム”。

その石を手にした者は、魔法少年として、魔人という人を襲う化け物と戦う運命を背負うことになるんだ。

つまり、ひとつの願いをかなえる代わりに、命懸けの戦いをしてもらうことになる』

魔法少年……化け物……戦う。

それがどういうことなのか、そもそもこれは現実なのか、いまいちピンとこなかった。

ただ兄さんの怪我を治したい。それだけで頭がいっぱいだったんだ。

剣城『わかった。化け物だろうが何だろうが戦う。魔法少年でも何でもいい。

兄さんの怪我を……治してくれ！！』

キュゥべえに向かってそう叫ぶと、突然胸の辺りが苦しくなり始めた。

目の前に出てきたのは……赤く輝く、卵型の宝石。

キュゥべえ『君の願いは無事聞き届けられたよ。

お兄さんの病室に行って、確かめてみるといい』

兄さんの怪我が治り、ソウルジェムを手にする。

俺が魔法少年になった瞬間だった。