喫茶店にて ページ44
〜神童side〜
百雷神社の隣にある、小洒落た喫茶店。
昨日の約束通り俺たちはそこに集まったわけだが、3人とも異様に暗い雰囲気だった。
3人で丸テーブルを囲むようにして座り、各々飲み物を頼んだものの、それからは誰も口を開かない。
でもそれは無理もない。
霧野と倉間が……今日学校を休んだだけでなく、昨日の晩から家に帰っていないというのだから。
2人とも同じ部活の仲間で、かけがえのない友達だ。心配でたまらない。
しかも……
昨日の夜、霧野はSNSで『キラキラ様』のウワサについて呟いていたのだ。
【本当にいるとしたら、試してみたい。百雷神社に行ってみようかな】
＿＿＿＿と。
もちろんそれ以降は何の呟きもない。
だからとても嫌な予感がした。
神童「まさか、こんなことになるとは」
重苦しい空気でもなんとか会話を紡ぐべく、声を出す。
俯くと、ティーカップに注がれた紅茶の水面に、暗い表情をした自分の顔が映り込んだ。
浜野「ちゅーかやっぱり……霧野が行くって呟いてた百雷神社に、そのキラキラ様とやらがいるのかな」
手に持ったオレンジジュースをストローでかき混ぜながら、浜野が言う。
積み重なった大きめの氷がカラカラと音を立てた。
剣城「それで済めば簡単なんですけどね……」
浜野「え、違うの？」
剣城がアイスコーヒーをひと口飲んで、小さく溜息を洩らす。
剣城「あまり期待はしてなかったんですが、もう試してみました。結果、何も起こらないまま。
大体パワースポットとか言われて参拝客が多い神社で、名前を書いて行方不明になってたら……今頃もっと大騒ぎになっているでしょう」
浜野「それもそっか」
神童「ということは、百雷神社にキラキラ様はいない？」
剣城「断言はできません。俺が情報を見落としている可能性もあるので。
ただ、百雷神社は縁結びのパワースポットなので、絵馬に誰かしらの名前を書く人は多いはず。
つまり今ある情報だけでは、対象者が多すぎるんです」
剣城はそう言って、百雷神社へと続く石階段を見上げた。
老齢の参拝客や観光客と思しき外国人が、その石階段を登って行く。
すると、浜野は言った。
浜野「んー。実際にキラキラ様に会って行方不明になった人の数を踏まえると、もっと絞らなきゃいけないのか。
ウワサにある『絵馬に名前を書いて行儀良くお参りする』って方法以外に、他にも限られた“条件”があるのかもね」
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作者名：サリア | 作成日時：2020年2月6日 21時
