突き放し ページ22
〜貴方side〜
神童「君が稲妻町での“噂”を聞きつけて来た……その事実だけで十分。そして俺たちが君に求めるのは、
今すぐこの町を出て行け。それだけだ」
貴方「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ！」
話を聞こうともせず突き放す神童くんに、私はつい慌てて声を張り上げる。
神童「君は何も知らないから、“噂”に釣られてこの町に来たんだろう。
行方不明者が出てるとか、魔人が強いとか、そんな噂を聞きつけて興味本位で。
そうやってのこのこと来た魔法少女や魔法少年が、次々に失踪している。この町の魔人に喰われてな。
だからこれは、君のためを思ってのことだ」
神童くんはグリーフシードを私に投げて寄越した。
神童「そのグリーフシードは譲る。わかったら、もう稲妻町には近寄るな。
……浜野、いいか？」
浜野「全然いーよ。俺まだたくさん持ってるし」
貴方「そ、そんなッ……！」
神童くんはもう話すことはないと言わんばかりに、私に背を向ける。
確かに思い知った。この町の魔人は強い。私じゃとても魔法少女が務まらないほどに。
けど……！
私と同じ、願い事を忘れた魔法少年。
行方不明の松風くんたち。
この町でまだ知りたいことが多い。あまりにも。
貴方「私、探してる魔法少年がいるの！」
そう叫ぶと、神童くんの足が止まる。
神童「……？」
浜野「なになに？ 人探し？」
私の言葉に、2人は不思議そうに私を見る。
貴方「私、自分が何を願って魔法少女になったのか、全然覚えてないの。キュゥべえに聞いてもわからなくて……
そしたら、稲妻町にも同じように自分の願い事に関する記憶を失くしている魔法少年がいるって聞いたの。
その人に会えば、記憶を失った原因について何か手がかりが掴めるんじゃないかって思って」
神童・浜野「えっ」
2人が同時に声を上げる。
信じられないものを見たような、あからさまに驚いた様子で。
それでもなお、私は必死に訴え続ける。
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作者名：サリア | 作成日時：2020年2月6日 21時
