国木田独歩 ホットケーキ ページ19
薄力粉、卵、牛乳、ベーキングパウダー、砂糖をかき混ぜた薄肌色の液をお玉で掬い上げ、熱したフライパンに落とす。
「くうぅ、何故だ、何故なんだ!」
国木田の、屈辱的な声が響く。その隣で、Aは声を殺し、笑い続けていた。
彼が入ると狭くなる社の台所で、中々ホットケーキが出来ない。
綺麗な丸が、作れない。
やり方は教えていない。教えるなと言われたから。
ただ上から落とせば円になるのに、円を描こうとしてお玉を動かすので、円にならない。
生まれてから22年間、何して来たんだ?
「国木田、そろそろ乱歩さんとかが怒鳴り込んでくるよ?このアメーバみたいなので、満足すると思う?」
「待て……コツが、もう直ぐ掴めそうだ……!」
皿の上には円形になれなかったホットケーキ達が積み上げられている。
味は同じだが、社長と乱歩さんにはお出し出来そうにない。
然し、国木田は動きそうも無い。
これ位出来るでしょ?と口を滑らせたのが悪かった。
大人なら出来ると思った……完璧主義者、面倒である。
「ねえねえ、国木田」
「いや待ってろA、今、月の様に丸いのを」
「はいはいもう待てないから、一緒に作ろうねえ」
と言って、Aは彼の手の上からお玉を掴んた。フライパンが見えないので、彼の腰に手を回し、グイッと覗き込む。
「のあっ?!」
「こうやって作るんだよー」
液をフライパンに流し込んだ。
生地は拡がり、綺麗な円形に。フツフツと、穴があいていく。
「全くもう、時間かかり過ぎだよ。今日の予定、めっちゃ崩れたでしょ」
フライ返しで焼き上げ、次々と作っていく。
「ちょっと、聞いてる?」
数分振りに声をかけた瞬間、彼の方が力が強かったのか、お玉が震えた。円形、歪む。
「ちょい、だから動いちゃ」
「A……」
静かに、彼は言う。
「その……作り方は分かったから…離れてくれ」
「えー?よーし分かった、じゃあちゃんと、最初に作ったのも全部持ってくるんだよー?」
悪戯っぽく笑いながら、パタパタとAは出て行った。
少しして、乱歩が入ってくる。
彼は勿論、遅いと文句を言いに来たのだが、台所を見渡し、一連の流れを読み取ったらしく、ニヤリと笑った。
「結構柔らかいでしょ、Aちゃん」
「………」
その日、尋常じゃない量のホットケーキが、江戸川乱歩に注ぎ込まれたという――
――理由は誰にも、底知れず。
国木田独歩 シフォンケーキ→←中原中也 シュトーレン【月瀬様Req.】
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午(プロフ) - 体の90%がラムネさん» 体の90%がラムネ様、ご感想ありがとうございます!また三期でお待ちしております、宜しくお願い致します!更新頑張ってください! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 闇川幽鬼様、単品で織田作登場です!ありがとうございます! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
体の90%がラムネ - 初コメです!めっちゃ良きでした!!突然ですが、リクエストしたいですが…。ダメでしたね。すいません!また募集している時にいきます!更新待ってます!(自分も更新しろよと思う今日この頃) (2019年12月21日 13時) (レス) id: 8dd45af6f4 (このIDを非表示/違反報告)
闇川幽鬼 - 作之助様登場!!(*゚∀゚*)嬉しいです!(*^_^*) (2019年12月21日 0時) (レス) id: 56867ea8da (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 月瀬さん» 月瀬様、リクエストありがとうございます!只今からのリクエストは無効とします。ゆっくりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します! (2019年12月15日 11時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年8月25日 17時