中原中也 シュトーレン【月瀬様Req.】 ページ18
その原動機音に振り返る。
「ふむAか。又何処か走ってきたかの?この時期と云うことは――」
「紅葉正解。今年も購ってきたよ」
400CCの二輪に跨がり、ワインレッドのライダースーツに身を包んだAがメットを取ると、美しい髪が風に揺らいだ。
「……かッけぇ」
中原中也は感嘆する。
そしてAが腰鞄から大事そうに取り出した、
白い包みのそれは、まるで赤ん坊の様な。
二輪を停め、尾崎の影にいた少年にAが気付くと。
「誰?紅葉の子?」
「八つ裂きにするぞ」
「やだ冗談」
「可愛い冗談じゃの」
楽しそうな彼女たち。
「ほれ、太宰が連れてきた擂鉢街の」
「ああ中原君」
名を呼ばれて少しざわつく心臓。初めての、何だ、コレ。
「なんすか、それ」
中原が尋ねると、Aはニカッと笑って云った。
「君も食べるか?」
・
・
・
中原中也は小刀を持つ。
ギラリと光る細い切っ先を、砂糖の固まりへ深く入れた。
「厚い、厚い!」
「え?」
簡単に通った小刀は戻せない、分厚いシュトーレンを見つめて、Aはげんなりする。
「……若いなぁ、15歳」
「ぁ?砂糖は摂れる時に摂ればよくないですか?」
これだから孤児は……。
や、まあ多分知識不足。
マフィアに入ったならば、
教養や身嗜み、品格に至るまで叩き込んであげないと。
「待降節の4週間を掛けて食べるんだっての。だから保存も兼ねて砂糖塗れ」
「それより」
中原は五ミリ位に薄く切り直したシュトーレンをAの前に置く。
「あの二輪、Aさんのか?」
「そうだよ。あと十何台はあるよ」
「すげぇッすね」
その数週間で段々と、果物の甘味や洋酒の香りが染み渡り、聖夜祭への楽しみが増えていく。
「オレも乗ってみたいです」
「へえ」
この子、足届くのかな。
…云わないでおこう。
ニヤつきながら、シュトーレンを齧る。広がる甘味、丁度善い食感。
「太宰君がね、この分の砂糖を一気に食べたら死ねるだろうかって」
「あの屑の話はしないでください」
パクリと一口で詰め込み、きゅうっという顔をする。
うん、この子お酒弱そう。
「今日から二輪見に行っていいですか?」
「まずは……小型からだね」
この後、
一年以内に、
大型二輪を中原が乗りこなし、
後ろにAを乗せて
シュトーレンを購いに行く様になるのは、
誰にもわからなかった、未来となる――
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午(プロフ) - 体の90%がラムネさん» 体の90%がラムネ様、ご感想ありがとうございます!また三期でお待ちしております、宜しくお願い致します!更新頑張ってください! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 闇川幽鬼様、単品で織田作登場です!ありがとうございます! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
体の90%がラムネ - 初コメです!めっちゃ良きでした!!突然ですが、リクエストしたいですが…。ダメでしたね。すいません!また募集している時にいきます!更新待ってます!(自分も更新しろよと思う今日この頃) (2019年12月21日 13時) (レス) id: 8dd45af6f4 (このIDを非表示/違反報告)
闇川幽鬼 - 作之助様登場!!(*゚∀゚*)嬉しいです!(*^_^*) (2019年12月21日 0時) (レス) id: 56867ea8da (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 月瀬さん» 月瀬様、リクエストありがとうございます!只今からのリクエストは無効とします。ゆっくりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します! (2019年12月15日 11時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年8月25日 17時