第215話 豪炎寺なら ページ16
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その日の真夜中。みんなが寝静まった頃、Aはユニフォームに着替え、ボールを手にしてテントを抜け出した。
グラウンドに入り、ゴール前に立つと、Aはボールを地面に置いた。
「───
Aが高くボールを蹴り上げ、シュートを打ち込む。
しかし、シュートはまたも外れた。ゴールポストに当たり跳ね返ったボールを、Aは力任せに蹴り返した。
ボールはコースを外れ、ガンっと音を立てて、またゴールポストに当たると、そのまま地面に落ちた。ころころとAの足元に転がるボールを見つめながら、Aは唇を噛んだ。
「くそ……っ」
Aは力強く地面を蹴った。どうしてもシュートが決まらない、みんなが先に進んでいくのに、自分だけが立ち止まったままであることへの憤りが、Aの中を渦巻いた。
豪炎寺が抜けて、染岡が抜けて、吹雪も不調だというのに、自分までもがチームの役に立てないのは、ひどく辛かった。チームメイトを支え、自分がいるから大丈夫だと安心させたいのに、それができない。むしろ、みんなの足を引っ張っている……それが悔しい。
「(こんなとき、豪炎寺なら……)」
Aはそこまで考えて、首を横に振った。
そしてまたボールを蹴り、ゴールに向かって打ち込んだ。
結局、その日Aがテントに戻ったのは朝日が登る一時間ほど前で、ほとんど睡眠が取れなかった。
─────
昼の12時頃、みんなはグラウンドに、ユニフォームを着て集まっていた。なんでも、円堂が知り合った“ヒロト”いう少年に、練習試合を申し込まれたそうだ。空は曇り気味だったが、みんなのやる気は十分だった。
「そろそろだね」
「ああ！」
春奈が腕時計を確認して、顔を上げた。
「12時になりました!」
その瞬間、辺りが黒い霧で包まれた。
「こ…これって、イプシロン…！？」
「来た！」
黒い霧の中で、まばゆい光が瞬いた。その瞬間、目の前に、十一人の選手が現れた。それは紛れもなく、“エイリア学園”だった。
「──やあ、円堂くん」
翡翠色の目をした赤髪の少年が、顔を上げて微笑み、円堂を見た。
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作者名：無名 | 作成日時：2022年10月5日 10時
