第414話 他人事のようには ページ15
、
「いないな……」
Aは周りを見回しながらため息を吐いた。吹雪は稲妻町に住んでいるわけではないため行くところはほとんど限られているはずだが、それでも見当たらない。どこか遠いところに行って道に迷ってなければいいけど、と思いながら、Aは、河川敷の方へ歩いてみることにした。
「………………あっ！」
河川敷を通り過ぎようとしたとき、近くの芝生に座る吹雪の後ろ姿が見えた。
「吹雪！」
「………Aちゃん」
Aが吹雪のほうへ駆け寄ると、吹雪はゆっくり振り向いた。表情は依然、曇ったままだ。
「ずっとここにいたのか？」
「うん……ちょっと、一人になりたくて」
「みんな心配してたぞ」
「そっか……ごめんね」
吹雪が眉を下げて笑いながら謝ると、Aは首を横に振った。
「隣座ってもいいか？」
「あ……うん」
吹雪が頷くと、Aは吹雪の隣に腰を下ろした。ここからだと、フィールドがよく見える。近くで流れる川は、夕日を照らしてキラキラ輝いていた。
「……私も、少し前までボールを蹴るのが怖かったんだ」
Aがいった言葉に、吹雪は顔を上げ、Aを見た。
「吹雪とは違う理由だけど……でも、家族を亡くして、それからサッカーをしなくなったんだ」
「君も家族を？」
「うん。ほとんど私のせいみたいなものなんだけどな」
Aが苦笑いをした。
「だから、吹雪の話を聞いたとき、なんだか他人事のようには思えなかった。自分の目の前で、家族を失うことの痛みが分かるから」
Aは肩にかけていた鞄の中に入れていたサッカーボールを取り出して、それをじっと見つめた。
「私がもう一度サッカーと向き合えるようになったのは、父さんと母さんが、サッカーをしている私のことを一番に応援していてくれたってことを思い出せたからだ。私がサッカーから目を背けていたら、きっと父さんたちは悲しむ。それを気づかせてくれた人がいて──」
「それが、豪炎寺くん？」
吹雪の言葉でAの顔が真っ赤になると、吹雪はくすっと笑った。Aは咳払いをして話を続けた。
、
第415話 どれだけ時間がかかっても→←第413話 宇宙最強が誰なのか
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
無名(プロフ) - 鮭の神様(元 レオ)さん» こちらでもお褒めの言葉ありがとうございます！😭🙏嬉しいです〜〜〜更新頑張ります😭💪🏻ありがとうございます〜！ (2022年11月15日 18時) (
レス) id: 144fc818ef (このIDを非表示/違反報告)
鮭の神様(元 レオ)(プロフ) - 設定資料の方にもコメントさせてもらいました！ドキドキしながら読ませてもらっています……😇無理せず頑張ってください！！ (2022年11月15日 18時) (レス) id: 8332330280 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：無名 | 作成日時：2022年11月4日 7時
