#百七十二振り目 ページ29
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___同時に時も止まったかのような、静寂。
強いて聞こえた音と言えば、...己の微かな息遣いのみ。
影華の動きを待つ。
程なくして、影はゆらりと揺れてこちらを見据えた。
「...だからよ。あなたの存在は許せない...。ほころびは、すぐに直さないと大きくなってしまうの、あなたは知ってる?」
「許せないの...。あなたたちに囲まれて、幸せそうに笑って生きていたあの女の事が...。全て破壊し尽くしたはずのあの女の形見が!未だこの世で私の邪魔をしようとしていた事がッ!!私は!我慢できない!!」
断末魔の叫びと同時に、ゴオッ、と風が吹き荒んだ。
布のおかげで直撃は免れたが、砂粒と、大きいものでは投石くらいの直径を持つ岩まで飛んできた。
まるで、意思を持つかのように。
舞う砂煙は一瞬にして山姥切たちの視界を覆い尽くし、...そして、それが再び落ち着く頃には。
「っ...、無事か、三日月、鶴丸...!?」
「あぁ、特に異常はないぞ。あくまで"俺たちにはな"」
「おいおいおい...。新手の手品師かあいつは...?」
鶴丸の、苦笑。
茶色のくすんだベールが晴れ渡り広がったのは、___豹変した時間遡行軍の姿。
異形の者は、さらにその上を行かんとしていた。
言葉で表すには複雑すぎるその容姿。
...明らかに、得物とその身体が強大化している。
まとう霊力が、さらに影華に影響されているのにもすぐに気づく。
駒と操者の繋がりが、完全になった。
___まさしくお似合いの表現だった。
「さぁ。そろそろ決着をつける頃合いかしら?山姥切国広、あなたはあの日、本丸にはいなかった。悲劇は繰り返される。あなたたちが抵抗する限り。
あなたたちにとっての頼みの綱だったあの小生意気な小娘は、使えない管狐と共に死んだのよ。あなたに守る物はもう無いし、あったとしても、私が心ゆくまで壊してあげる。
いい?滅多打ちにされても文句は言わない事ね。
今までの努力は全て水の泡___。あの娘がヘマしたせいでまた記憶を奪われることになるなんて、本当に笑えるわ!
もっと私を楽しませてくれる?それだけの時間は、与えてやっても___」
「「「...!」」」
変化は、一瞬だった。
湧き水のように淡々と続いていた影華の言葉が、唐突に詰まる。
それに気付けないほど、山姥切たちは鈍感ではなかった。
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*紫苑*(プロフ) - サクラさん» コメントありがとうございます!続編完成しましたよ!(*^▽^*)続編の方でも楽しんでくださると嬉しいです…!(*≧∀≦*)あともう少しだけお付き合いください!よろしくお願いします! (2020年4月3日 21時) (レス) id: a951637298 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - 続編気になるーーー頑張ってください!!!!大ファンです! (2020年3月30日 14時) (レス) id: 54588389f1 (このIDを非表示/違反報告)
*紫苑*(プロフ) - ちゃらんぽらんさん» 嬉しいコメントありがとうございます...!!1人でも多くの刀剣乱舞ファンの方を伊達組沼に落とそうと画策していた次第であります(笑)楽しんで頂いているようで作者も本望です(*^▽^*)続編、ラストスパートかけていきます!あと少し、よろしくお願いします!! (2020年3月23日 11時) (レス) id: a951637298 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃらんぽらん(プロフ) - (続)寂しさも感じます、続きを楽しみに待っております!かなり長くなってしまって申し訳ない!更新頑張ってください!!! (2020年3月20日 13時) (レス) id: 72997b1d17 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃらんぽらん(プロフ) - 初コメ失礼します!!めっっっっっっちゃ続きが気になりすぎて夜しか眠れません((元々鶴丸だけを推してたんですが、この小説がきっかけで一気に伊達沼に堕ちました……サイコーだぜ…((続きが気になるし、早く読みたいと思う反面、伍で終わってしまうのか…という(続) (2020年3月20日 13時) (レス) id: 72997b1d17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:*紫苑* | 作者ホームページ:http://twitter.com/wakagi116
作成日時:2019年5月10日 18時