検索窓
今日:1 hit、昨日:12 hit、合計:16,897 hit

ページ5

*



まっすぐまっすぐ天に昇っていく体。
空気抵抗に押し潰されそうな体。

昔、一緒に空に乗って移動できるポケモンがいてほしいと思って、あの人に捕獲を手伝ってもらった。デカヌチャンに襲われないように、アーマーガア系統のポケモンは諦めたんだっけ。



「……っはあ」



高く昇れば昇るほど、酸素が薄くなっていく。
苦しい。昔は薄着で雪山に登ったりしても平気だったのに、いつの間にか体質が変わってしまったらしい。


太陽が眩しい。真っ白で、テラスタルとかよりも、もっとずっと大きな力を持っているんじゃないかって、そんなふうに感じる。

目が開けられない。私がちゃんとしないといけないのに。
ポケモンに頼ってばっかりじゃ、駄目​────……。








「…………」



目を開けると、懐かしい景色が視界に入った。
実家のはずなのに、六年間もの間離れていたせいか、安心感は全く無い。

……誰だっけ。誰かが、結局一番落ち着くのは実家でしょう? って言っていたような気がする。でも今の私に実家はあまり合わないみたい。


寝返りを打って、また目を閉じた。久しぶりの休日……というか、今の私はニート。何時間寝たって誰にも怒られない。
……そう。怒られない……。



「……」



ぱちりと目を開けると、さっきまでそこにいなかったはずなのに、いつの間にかモンスターボールの中から出てきてしまっていたマリルリの顔があった。しかも超ドアップ。



「リルリル〜」



マリルリが私の手を引っ張って起こそうとする。


人間は、身長が伸びたり体重が増えたりするけれど、整形でもしない限り、ポケモンの進化みたいに何かが劇的に変わるなんてことは、基本的にない。

……でもこの子達は、この六年間の環境が変わって一日目の今日も、いつもと変わらない雰囲気だ。
人間のはずの私だけが変わってしまったようで、変な感じがする。



「水浴びたいの?」



マリルリに訊ねると、その通りとでも言うようにぴょこぴょことその場で跳ねた。その拍子にマリルリの長い耳が揺れて、それが可愛らしい。

マリルリにはよく助けられてきた。ルリリからマリルに進化するには時間がかかるが、マリルになればマリルリまでの進化はとても早い。

一番最初の、私の手持ちの最大戦力だった。



「リル〜……」

「ん? ああ、ごめんね」



中々起きない私に不満を募らせたマリルリの頭を撫でて、体を起こす。意外と体は軽かった。



「ちょっと考えごとしてた……」

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
51人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年2月25日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。