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まっすぐまっすぐ天に昇っていく体。
空気抵抗に押し潰されそうな体。
昔、一緒に空に乗って移動できるポケモンがいてほしいと思って、あの人に捕獲を手伝ってもらった。デカヌチャンに襲われないように、アーマーガア系統のポケモンは諦めたんだっけ。
「……っはあ」
高く昇れば昇るほど、酸素が薄くなっていく。
苦しい。昔は薄着で雪山に登ったりしても平気だったのに、いつの間にか体質が変わってしまったらしい。
太陽が眩しい。真っ白で、テラスタルとかよりも、もっとずっと大きな力を持っているんじゃないかって、そんなふうに感じる。
目が開けられない。私がちゃんとしないといけないのに。
ポケモンに頼ってばっかりじゃ、駄目────……。
*
「…………」
目を開けると、懐かしい景色が視界に入った。
実家のはずなのに、六年間もの間離れていたせいか、安心感は全く無い。
……誰だっけ。誰かが、結局一番落ち着くのは実家でしょう? って言っていたような気がする。でも今の私に実家はあまり合わないみたい。
寝返りを打って、また目を閉じた。久しぶりの休日……というか、今の私はニート。何時間寝たって誰にも怒られない。
……そう。怒られない……。
「……」
ぱちりと目を開けると、さっきまでそこにいなかったはずなのに、いつの間にかモンスターボールの中から出てきてしまっていたマリルリの顔があった。しかも超ドアップ。
「リルリル〜」
マリルリが私の手を引っ張って起こそうとする。
人間は、身長が伸びたり体重が増えたりするけれど、整形でもしない限り、ポケモンの進化みたいに何かが劇的に変わるなんてことは、基本的にない。
……でもこの子達は、この六年間の環境が変わって一日目の今日も、いつもと変わらない雰囲気だ。
人間のはずの私だけが変わってしまったようで、変な感じがする。
「水浴びたいの?」
マリルリに訊ねると、その通りとでも言うようにぴょこぴょことその場で跳ねた。その拍子にマリルリの長い耳が揺れて、それが可愛らしい。
マリルリにはよく助けられてきた。ルリリからマリルに進化するには時間がかかるが、マリルになればマリルリまでの進化はとても早い。
一番最初の、私の手持ちの最大戦力だった。
「リル〜……」
「ん? ああ、ごめんね」
中々起きない私に不満を募らせたマリルリの頭を撫でて、体を起こす。意外と体は軽かった。
「ちょっと考えごとしてた……」
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年2月25日 23時