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「校長先生みずからいらっしゃったんです！？」
母さんがびっくりという感情を露わにして言った。
校長先生は苦笑して、「アカデミーの不手際は自分の不手際ですので」と口にする。
それだけでなんとなく、いい人なんだということは伝わってきた。
「こちらが資料です」
「わざわざありがとうございます」
校長先生が母さんに袋に入った資料を手渡した。
妙にデカい紙袋だなと、クソ程どうでもいいことをかんがえる。
「お母さん、校長先生とお話があるから、二人とも通学の準備をしてらっしゃい。帽子と鞄は必要よね！」
「はぁい。行こ、ハルト！」
「うん」
パルデアは気候的に日差しの強い地方だ。ガラル地方出身の自分達に、この日差しはまだ慣れない。
自室から帽子とリュックをとってきて、それらを身につけてまたリビングに降りた。母さんと校長先生が何を話していたのかは聞こえなかったのでわからないが、話はもう終わったらしい。
校長先生は自分とアオイの顔を見て、ハッと気がついたかのように口を開いた。
「私としたことが……。大事なものを渡すのを忘れていました。ここではあれですから、外へ出ましょう」
そう言って校長先生が外へ出た。
「渡したいものってなんだろうね？」
「さあ」
「睡眠セットとかかな！？」
「……僕はアオイが過眠症なんじゃないかって最早心配なんだけど」
少なくとも絶対に睡眠セットなんかじゃないな。
そう思いながら外へ出た。
＊
紫色の表紙。読み古され、中のページは指あかでこすれて紙が柔らかく、そして黄色くなっている。
薄暗い研究所にひっそりと寂しく置かれたそれは、自分の大切なものを守り、助けるための唯一残された最後の手段だ。
もしかしたら、一人では無理かもしれない。
そう思う。すごく思う。バトルは、苦手だ。
が、自分に頼れる人はもう居ない。だから、自分がやるしかないのだ。それ以外に道がないから。
一冊の本を大きなリュックの中にしまった。激しい戦いに備えてたくさん準備していたら、いつの間にかこんなにでかいリュックになってしまった。
「……必ず助けてやるからな」
そう呟いた瞬間、ギシッと音を立てて研究所の扉が開いた。こんなところに来る奴なんて、自分とアイツ以外有り得ない。淡い期待を持って振り向くと、そこには顔も見たことないような一人の女が立っていた。
「はじめまして。……ペパーさん。フトゥーさんの、息子さん」
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2023年2月25日 23時
