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「六年……六年も、見つからないから、皆も事件に巻き込まれたんじゃないかって、もう、死んでるんじゃないかって……」



Aの肩を掴むと、その肩は女性らしく華奢だった。
昔は大して無かった身長差が開いていて、それが時の流れを感じさせる。


Aの顔を見ると、彼女の表情はどこか冷めていた。
冷めているというか、達観しているかのような、そんな感じだ。



「……うん、ごめん。悪かったとは思ってる」



昔よりも少し低くなった大人の声。

けれどもう、六年前の、無邪気を極めていた底抜けの明るさを持つAはそこにいない。



Aの頬を手の甲で撫でると、その頬は冷たかった。
薄着で、こんなにも体が冷たいのに、どうしてそんなすまし顔ができるんだ。そんな顔でいられるのだろう。




「……とりあえず、ジムの中入ってよ。警察と、あとAの家にも連絡……」

「あのさ」



Aが食い入るように口を開いた。

伏せていたAの瞳が上げられ、自分を捉える。赤い瞳の中に、対照的な冷たい色の自分が映る。



「……なに?」



顔も雰囲気も大人になっているはずなのに、何故か幼い子供の相手をしているような気分になる。
何を考えているのかわからないから、だろうか。子供も同じようなものだろう。子供の考えることなど、大人にはわからない。



「エーデルワイス、綺麗だった」



Aはそれだけ言って、「あーさむさむ」と言いながらジムの中に入っていた。

ワンテンポ遅れて、ジムを振り返る。



「…………は?」



は? なに?

ツッコミどころが多すぎて、最早(もはや)何をつっこめばいいのかすらわからない。


……というか、寒いなら、どうしてそんな薄着で来たんだ。

〈一章〉とけない氷→←〈序章〉ゆらりゆらりと燃える炎の如し



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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2023年2月25日 23時

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