第54話 ページ8
それが正しいかどうかだけなら、言える...
彼は一体どこまでを知っているんだ。
私は顔をゆがめて、彼に聞いた。
「あなたは、何者なんです...?凜の何をどこまで知っているんですか。」
質問に質問を返すのもどうかとは思ったが、先生の言動があまりにも不可解で、聞かないではいられなかった。
質問しているのはこちらです。
彼の顔がそう言っているが、彼は決して口には出さず、先生は少し苦笑して小さく言った。
「一応彼女のことなら、【村上凜】時代のことなら、なんでも知っているつもりです。」
彼がそう言うと、私は目を見開いた。
なんでも知っている。
彼は養子縁組を援護しているのだ。知っていて当然なのだが...
「...そうですか。」
私はそう言うとバッグから例のノートを取り出して、彼に両手で手渡した。
「これは?」
彼は特に何も書かれていない表紙を見て、不思議そうにそう言った。
私は先生の目を見ながらはっきり伝える。
「私が知っていることは全てその中に書いてあります。どうぞご自由にご覧下さい。」
私がそう言うと、彼はそうですか、と言ってパラパラとノートをめくった。
乱雑に殴り書きでメモをしたページはすぐに飛ばされ、この間情報をまとめたページが開かれると、彼は手を止めて読みこみだした。
たまに苦笑し、たまに眉間に皺を寄せながら、目を動かしていく。
先生はここに書いてあることなど、とっくの昔から知っていたんだろう...。
そう思っていると、どこかを読んだ彼は突然声を上げた。
「えっーー」
「先生...?どうされました?」
ノートを見つめたまま固まる彼に、私は身を乗り出して聞いた。
意外にも、動揺を隠せないような顔をする彼。
そんなに驚くようなことを私は書いただろうか。
彼が知らないとすれば、高校時代の凜。
一体何を...
まさか。彼はーー
「先生、もしかして」
その先を口に出せない私は、依然目を見開いたままの彼の顔を見つめる他なかった。
少し間を置いて、彼は顔を元に戻し、ノートを静かに閉じて机の上に置いた。
「そうですか。彼女が...。」
机の上のノートを見ながら放心する彼に、私は恐る恐る聞いた。
「...先生、もしかして、凜が亡くなったのをご存知なかったんですか。」
自分でもわかる。震える声。
受け入れたとは思っていたが、やはりこの事実を口にするのは辛い。
ましてや、主治医の前で...
24人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
fruit(プロフ) - 黒百合さん» コメントありがとうございます!!!お見通しの通り、伏線、いっぱい張ってますよ〜笑もうすぐクライマックスに差し掛かります。推理も一緒にお楽しみください!!これからもよろしくお願い致します!! (2019年7月19日 20時) (レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
黒百合(プロフ) - ストーリーの至るところに伏線が隠されている(と私が思っただけですが)ので、展開を考えて読むのが楽しみです。ストーリーの緊張が高まった所で切れるのでドキドキしながら読んでいます。更新、頑張ってください!応援しています。 (2019年7月17日 22時) (レス) id: a567d07bc8 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» コメントありがとうございます!!第1弾に続けてコメントくださって本当に嬉しいです!!!!ここからはテストが少なくなるので、どんどん更新していくつもりです。どうぞ最後までお付き合い下さい!いつもありがとうございます!!! (2019年7月2日 22時) (レス) id: dc8b637267 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、コメント失礼します。このお話更新されるとすごい嬉しくなります!笑今後の展開も楽しみです◎更新、fruitさんのペースで頑張ってください! (2019年7月1日 23時) (レス) id: bcb759c156 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - ハバネロさん» コメントありがとうございます!!前作から...とても嬉しいです!元気が出ます!!(笑)是非色々と予想を立てながらお楽しみください!ミステリーを書くのは初めてなので不安もありますが...どうぞ応援宜しくお願いします! (2019年6月8日 7時) (レス) id: 479b2f8b1f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:fruit | 作成日時:2019年6月7日 23時