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第七十五話 ページ9

クロハSide


クロハ「ほら。着いたぞ。」


A「おお!やっぱり大きいなー!」


クロハ「…俺、休んでくる。」


A「まあまあそう言わずに。クロハも見てってよ。」


クロハ「なんでだよ。文字ばっかりで後は何も面白くないじゃないか。」


A「いいから。あ、これ懐かしいなー!」


クロハ「…。」


Aに半分引きずられながら、ついていくと、さっそうとAは本を手に取り、読み始めた。


その横顔は、今までにないくらい嬉しそうだった。


__まあ、可愛いからいっか。


クロハ「…お前、そんなに面白いか?」


A「まあね。なんだか自分が本の想像の世界に入ってるみたいだし。」


クロハ「想像の世界…。」


気がつくと、Aの目は赤く染まっており、辺りに広がる草原が映し出された。


まあ、本棚自体はそこにあるのだが。


A「自分で想像した事を、実現出来たら面白いかなあって…。」


Aはくるりと振り返って笑った。


Aの想像している世界か___


A「どうかしたの?」


考えに浸っていると、Aの目から赤い色がすっと消えていた。


クロハ「いや…お前、想像力が豊かだなあって。」


A「…そうかな?」


Aがふにゃっと笑う。


その度に、胸が高鳴ってしまう。


__やっぱり、


クロハ「A。」


A「…何?」


クロハ「…お前、笑ってる方がその、普通の時より…ずっと可愛いと思うぞ。」


Aは途端に顔を赤くした。


A「いや、そんな事ないって…。」


クロハ「そんな事、ある。」


もっと、その笑顔__


俺に、向けて欲しいから。


A「…っ。」


俺は本棚にAを軽く押し付けた。


A「か、顔近いって…。」


途端にAは持っていた本を落とした。


クロハ「分かってる。」


そのまま、Aの耳にふうっと息を吹きかけた。


A「ひゃっ…な…なにす…」


Aの顔はこれまでないほどに赤く染まっていた。


俺はAの耳を弄んでいたが、しばらくしてAを押し付けるのをやめた。


クロハ「さて、次行くか。」


A「こ、このタイミングで!?」


クロハ「なんだ、もっとしたかったたのか?」


ニヤリと不敵な笑みをAに向けた。


A「そ…それはない!もう行くよ!」


Aはそっぽを向き、スタスタと歩いていった。


__もう少しだけ、君に触れたい。


そう思っていた自分が心の片隅にいた。

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作者名:Madicc | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/redwhite/  
作成日時:2014年1月20日 2時

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