happIness*2-44 ページ44
(翔side)
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「、はい黒川です」
「おはよう黒川さん、櫻井です」
「お疲れさまです、工藤さんどうですか？」
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スピーカー越しに聞こえるその声と会話をする。
彼は彼女の専属マネージャーなので、
こんな風に会話をすることもあまりなくて、ちょっと面白いなぁと、アクセルを踏みながら小さく笑う。
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「今朝、38度。夜中一回あがって……39.5まで、だから下がってきてるかな」
「それ下がってるって言います？」
「……まぁ、数字だけ見たら？」
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ごもっともな反応……高熱の範囲で下がっているんだから、
判断が微妙なところだ、
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「病院は嫌だって！」
「……説得してくれました？」
「あは、したよ(笑)でも頑な」
「まぁ、想定内でしたけど」
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仕方がないなぁ、というように笑うから、
この人は、Aのことが可愛くて大切でたまらないんだろうなぁと思う。
じゃないと、出世コースを断ってまで、
いつまでもタレントの専属マネージャーなんかやってない。
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「なんで、こういう時だけ根性論なんですかね？」
「っははは、それは俺もそう思う(笑)」
「謎です、ほんとに、工藤さんは、」
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専属マネージャーの、心の底からの言葉だった。
ね、とその言葉に同意をしたら、
「でも、下がってるなら良かったです」と返ってくる。
力ずくで連れていくのなんて簡単なのに、
それをしないのは、彼女が大切にされているからだろう。
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「昼、１回様子見に戻るから」
「……」
「また連絡します」
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そのための車出勤だった、
電話越しのその人が、ふ、と笑う気配がして、
思わずスピーカー表示の端末の画面に目をやった。
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「工藤さんがちゃんと大切にされていて安心しました」
「……、」
「よろしくお願いします」
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あの記事のことはもちろん知っているんだろう、
疑うようなことをする人ではないのは分かる、
Aのことを俺に聞いてくるくらいだし。
だけど、心配もしていたのかもしれない、
彼は、時々、父親みたいな顔をする。
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彼との通話を終わらせて、ハンドルを握り直す。
そういえば、Aと電話をすることもなくなってしまった、
こうして自分で運転した日の帰りは、
誰かに会話を聞かれることもないので、
家で待つ彼女と話ながら帰路につくこともあった。
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日常は、戻ってくるのだろうか。
誰にも、分からない。
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