happIness*2-42 ページ42
「A？起きたの？」
「……、」
「え、どうした」
.
床に座り込んでいる私を見て、彼が私の名前を呼ぶ。
あぁ、やさしい。
膝をついて顔を覗き込むので、これが飲みたいと、
ペットボトルを差し出す。
.
「ん？あかなかった？」
「、」
.
私から受け取ったあと、簡単に蓋をはずしたそれを渡して、
口元に持っていく様子をじっと見られる。
上手く飲めずに溢す私に、彼が眉を寄せた。
.
「おいおい……大丈夫？」
「、」
「震えてる、寒い？」
.
小さく頷く私を彼は抱き寄せて、
暖を分けるようにぎゅっと抱き締める。
寒さで震えていた身体から、力が抜ける、あったかい。
.
「辛そう、熱あがるね」
「……」
「明日病院行く？」
「、」
.
首を横に振る。
甘えるみたいにぎゅっと背中に手を回す。
.
「っはは、頑固だなぁ……(笑)」
.
私の返事が分かっていて聞いたであろう彼は、
呆れたように、だけど仕方がないなぁというように笑った。
.
「ほら、ベッド行こう」
「……」
.
静かな部屋に響く声が優しくて、
大好きだと何度言っても足りないと思う。
身体を支えられながらベッドに逆戻り。
ぐるぐると回る世界に、瞼を閉じる、やっぱり、寒い。
.
「寒いなぁ……かわいそうに、」
「、」
「代わってやれたらいいのに」
.
なんで、そんなことを言うんだろう。
なんで、そんなに優しいことを。
彼の指が、私の髪の毛を撫でて、そのまま額へ。
前髪に優しく触れる、何度も、何度も。
.
布団から腕を出して、その指に触れた。
指と指を絡ませて、ぎゅっと握る。
あったかい、ボディソープの匂いがする
……あぁ、シャワーを浴びていたのか。
.
「おやすみ、A」
「……」
「はやく良くなって」
.
良くならないと、別れ話ができないから？
メンバーが熱を出していたら、心配だから？
……聞けたら、いいのに。
聞けたら？声が出せたら、私はこれを聞けるんだろうか。
.
……聞けるはずないのに。
声があってもなくても、彼に嫌われたくないのも、
傍にいたいのも変わらない。
.
あぁ、でも。
声が、出ていたら。
声が、あったら。
彼が好きなままの、私だったんだ。
.
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