口癖 -3- (ページ34)

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side N

無意識の固定概念が、勝手に生まれる。

「僕も思ってた、きつい香水つけるのは女の人のほうが多いんだなって」

「だから別に、大丈夫だよ」

いつもどおり笑って説明してくれる。

僕も同じように思うよって。

毎回こんなことさせるのかな。

俺らはこう思うけど彼はどうなのかなって無意識に顔色窺って

彼に、”僕も同じだよ” ”僕は違うよ” って説明させて。

こんな残酷なこと。

毎回？

「やっほー」

「あ、ふたりともお疲れさま」

「ありがと。潤体調は？」

「うん、大丈夫」

「あ、やっぱりストレートティーある。あぶね、買ってくるとこだった」

「ふふ、僕そんないっぱい飲めない」

「ね、だよね、ふふ」

あぁ、聞いてたな、って思った。

ふたりとも、たぶん聞いてた。

空気を窺ってたんだと思う。

ヘンな空気にならないならその会話に混ざるし、

ヘンな空気なら会話を遮るように病室に入る。

後者だと判断したんだろう。

助かった、って

そう思う自分にも、嫌気が差した。