105 / その中に在るものを知って ページ13
side A
「…………………記憶、戻ってること……言ってくれないじゃん、」
答え合わせ、まだ出来てないのに。
また、先走った。
すぐに先走ってしまう。
まだ何か、あるかもしれないのに。
「……うん、ごめんね。いつ言ったらいいかわかんなくて」
少し間があった。
眉は少し下がって、少し哀しそうな顔をして。
なのに、いつもどおり綺麗で。
戸惑う俺の手を、
白く透き通った彼特有の手が、撫でる。
「相葉くん」
「1982年12月24日生まれ、」
「いつも元気で優しくて思いやりのある人だけど、ちょっと泣き虫」
「覚えてるよ。ごめんね、言わなくて」
彼を見つめる自分の瞳から、零れ落ちるものを感じる。
唯一変わらなかった。
俺の呼び方だけ、唯一。
でも変わった。違った。
いつもの ”相葉くん” じゃなかった。
頼ってくれることは変わらないとしても
バカだな、って俺を見て笑う貴方が居ないことが寂しかった。
俺を深くまで知ってくれている貴方が居ないことが、
とても。
「……ふふ、相葉くん」
何を言ったらいいかわからなくて
ただ抱きしめる俺を、貴方は笑った。
この行動を読んでいたように。
読めるんだね。
俺のこと、思い出してるんだね。
相葉くんらしいな、って
ねぇ、そう思ってるんでしょ？
貴方の中に、
それが、ちゃんと存在してるんでしょ？
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年5月22日 18時
