運命の糸は知っている[上杉和典]Season２

５６紡ぎ目 ページ6

貴『...ぁ...ぉ...とう...さん...』(ｶﾞﾀｶﾞﾀ



顔から血の気が引いて、冷や汗をつたったのが自分でも分かる。


お父さんを助けないと...美恋の居場所を聞き出さないと...。



そう頭では分かっていても、虐待を受けていた時の記憶が蘇り、

ガタガタと身体を震わせる。




グイッ！



貴『ぇ.....？』



いきなり後ろから引っ張られて、ギュッと抱きしめられる。



上｢分かった。分かったから、何も言わなくていい。

　俺たちがいるから安心しろ｣



そんな声が頭上から降ってきて、背中を撫でられる。


私たちの間をぬって、若武、黒木、美門、七鬼が前に立ち塞がった。

そんな私たちを見て、お父さんはクスリと笑った。



忠｢そんなに警戒しなくとも、私はただ、娘を迎えにきただけだ。

　妹の死を見届けずに離れ離れにさせるのは、少し気が引けるのでね｣


貴『....っ！！』



その言葉を聞いた黒木が前に出た。



黒｢つまり、妹の死に行く様を見せる為だけに迎えに来たと？｣


忠｢それだけじゃない。ずっと一緒に暮らしてきた母親と再開出来るんだ。

　Aにとっても、最高の機会だろう？｣


貴『...わた...しは...』


上｢天海夜、喋るな。そんな状態で対抗しても、恐怖心が増すだけだ｣



そう言って、抱きしめる力を強くする。

それだけで、少し気持ちが落ち着いて来たのが分かる。



お父さんは、クルリと背を向けて外に向かう。



忠｢どちらにせよ、Aは美恋に会いたいんだろう？

　案内するから、全員車に乗りなさい。

　悠飛くんを運んでくれ｣


部下に命令したお父さんは、外に止めてあった車の後ろに乗り込む。

私たちも後に続いた。



中は向かい合わせになっていて、私はお父さんの正面に座った。

車が出発したところで、お父さんが話し出した。



忠｢君たちが私たちの事を嗅ぎ回っていたのは聞いたよ。

　一昨日の夜、君たちを襲った後に尾行するよう命じたからね。


　特に、黒髪で高身長のきみ｣



お父さんが黒木を指指した。



忠｢私が霞たちと結婚したことや、Aと美恋が血が繋がってないということを

　調べあげた。お見事と言うしかない。


　そこで、美恋に会う前に、君たちが疑問に思っている事を全て答えてあげよう。

　さて、何が聞きたい？｣



そう言ったお父さんに、みんなが唖然。

昔と...違う。



多分、変わったんじゃない、開き直っている。


自分のしている事が正しいと...。

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