第百七十一話 ページ42
あっという間に試合の日が来た。
相手は七森学園で、特に目立った選手はいないため、完封勝利だった。
最大の収穫は、沢村がインコースに投げ込むことが出来るようになったこと。
一度デッドボールを与えたものの、ちゃんと立ち直った。
前園が打てるようになって打撃力も上がって来たし、
これなら稲実といいところまでやり合えるかもしれない。
誰もがそう思っていたはずなのに___
私たちに届いたのは、稲実が負けたという知らせだった。
・
帰って来ても、食堂は重々しい空気のまま。
無理もない。誰も稲実が負けるなんて思ってなかったから。
それは夜のミーティングでも同じだった。
ミーティングが終わったあと数人でビデオを見ていた時、御幸が言った。
御「自滅だよ、こんなのは。
捕手のリードは明らかに、最後変化球で仕留める為のもの。
成宮にどんな考えがあったか知らねーけど、首振った瞬間に勝負はついてた。
俺が捕手だったら、絶対わがままを通さなかったけどな...」
いつも以上に感じる御幸の気迫に、全員が一瞬黙り込んだ。
貴『...なんでそんなに怒ってるのよ』
御「怒ってねーよ!」
麻「怒ってんじゃねーか!」
何この馬鹿みたいな会話...。
倉「じゃあ元相棒のAはどうしてたんだよ」
急に話を振られて、私は少し考えた。
貴『確かに捕手としては、御幸の言うことも一理あるけど、
個人としてはわがまま通して痛い目見てもらうわ。
今後の為になるのなら、別に勝ち負けなんてどうでもいいから』
そう言うと、また全員が黙り込んだ。
...何かおかしなことでも言っただろうか。
前「...お前は鬼やな」
御「しかも勝ち負けどうでもいいって、なかなかいねーぞ」
実力で負けて悔しいと思ったことはあるけど、
試合の勝ち負けで悔しいと思ったことはない。
自分でも他とは違うことは自覚済みだ。
貴『まぁ、私は自分の意見を言っただけだし』
私はそう言って席を立った。
倉「もう戻るのか?」
貴『大体のデータは頭に入ったから』
食堂から出ると、少し肌寒かった。
...さっきは勝ち負けなんてどうでもいいって言ったけど、
御幸たちに秋大勝って欲しいって思っている時点で、
どうでもいいなんて思ってないんだろう。
もし勝ったら、みんなと喜べるだろうか。
負けたら悲しめるだろうか。
私の壊れた感情は、まだ完全に戻っていなかった。
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桜餅(プロフ) - 夜さん» 予防接種バッチリなので多分大丈夫!だと信じたい!←これからも頑張ります! (2019年12月15日 1時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - 藍こさん» 最近イチャイチャ書けてなかったですからね〜早く文化祭書きたい...試合どこをカットするか毎回悩み所です(^.^; (2019年12月15日 1時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
夜(プロフ) - 更新お疲れ様です楽しみにしてます。お体にお気をつけて頑張ってください (2019年12月15日 0時) (レス) id: ccee2c2824 (このIDを非表示/違反報告)
藍こ(プロフ) - 御幸さんとのいちゃいちゃ!!きゃあ!!ありがとうございます!お疲れ様です^_^ (2019年12月14日 20時) (レス) id: b64ba8aeaf (このIDを非表示/違反報告)
桜餅(プロフ) - 豪炎寺修也推しさん» ですね!何事も元気が一番!まぁ風邪引いて学校休みたいって思っちゃう日もあるんですけどね← (2019年12月6日 19時) (レス) id: 03f4026521 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜餅 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2019年11月13日 17時