″元″冷酷のマネージャー【御幸一也】

第百六十八話 ページ35

前園は調子に乗って三塁でアウトになったものの、この回で逆転出来たのは大きい。

今のが甘い所に来ていなければ、こうもいかなかっただろう。


そこで私は気付いた。



貴『...少し、空が明るくなってきた...』



最終回は川上と交代。

テンポよくツーアウトまで追い込んだものの、あとアウト一つがなかなか取れない。


守備でもミスが生まれ、心なしかみんな焦って来ている気がする。

そこで御幸はタイムを取り、全員がマウンドに集まったところで、

何やら後ろを指差した。


正確には後ろではなく、空のようだ。

最終回に入って雨が止み、雲の間から太陽の光が差し込んでいた。


それを見た川上の顔つきが変わる。

最初のピッチングのように低めにボールを集め、ラストバッターを打ち取った。



主「整列！！」



主審が試合終了の声を上げ、私はベンチの外へ出た。

さっきまでの天気が嘘のように綺麗な空だ。

...敵だった天気を味方につけたというか...。


二対三というギリギリの試合だったし、課題もたくさん見つかった。

けど今は、勝ったことの喜びの方が勝っているだろう。



主「礼！！」


全「したぁ！！」



・



貴『......』



全員が寝静まったであろう時間。

私は一人食堂で今日の試合のビデオを見ていた。


スコアを全て確認しながら、ミスがあれは直す。

たまに、試合ではエラーではないと判断しても、改めて見たらエラーだった、

なんてこともあるからだ。


中断部分を飛ばし、また試合を再開させる。

丁度降谷の様子がおかしくなった辺りだ。


...やっぱり集中が切れたのが原因かもしれない。

思えば、中断前から少しそう感じる場面もあった。


しかし、集中力に関しては降谷の意識の問題であって、

練習で自然と身につかない...訳ではないが難しい。


それは監督たちも分かっているとは思うが、降谷はこれからも多く先発を任されるだろう。

このままでは次の試合でも変わらない。

さて、どうしたものか...。


私がビデオを見ながら頭を悩ませていると、食堂のドアがガチャッと開いた。



渡「あれ、A？こんな時間までビデオ見てたんだ」


貴『渡辺...』



随分意外な人物に会った。

私はあまり話したことがない。


けど、渡辺のデータ収集力の高さは尊敬に値するものだった。

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