″元″冷酷のマネージャー【御幸一也】

第百六十五話 ページ32

今日は本選初日だと言うのに、昨日の雨は止むことなく降り続けていた。

グラウンドも最悪のコンディションで降谷の立ち上がりが心配だったが、

いい感じで相手を抑えることが出来ている。


けど、それは向こうも同じ。

甘い球は一切なく、抜群のコントロールでうちの打線をものともしなかった。


両者無得点のまま五回に入った。

すると、一気に雨が強くなった。


確か午後から晴れる予報だったのだが、一向に止む気配がない。

ここから、流れが傾き始める。


先頭打者がセーフティーでボールを転がす。

普通なら切れる軌道だが、雨のせいで止まってしまった。


次の打者は四球で出塁。

こればっかりは滑るので仕方ないが、天気は悪くなるばかり。

これでは中断してもおかしくない。


しかし間に取ったタイムで切り替えたのか、残り三人は力で捩じ伏せた。

これで流れが戻ればいいけれど...。


・


御「止まねーな、雨」


貴『えぇ...』



私は、ベンチの屋根から滴り落ちる雨粒を見ながらそう答えた。

出来ればここで切られたくなかったのだけど...。



貴『降谷、アンダーシャツあと何枚ある？』



私は後ろを振り返り、なぜか寝ている降谷に聞いた。

すると、眠そうな声が返ってくる。


降「...これと...あと一枚...」


御「じゃあ俺の貸してやるよ。攻撃からの再開だし、肩は冷やさないようにしとけよ...」



それは外で投げてるアイツにも言えることだけど。

本当、よくこんな雨の中投げ続けられるものだ。



片「向井の球数は？」


貴『六十二球です。今のところ甘い球は一球もありませんが、

　 これだけ投げさせられていれば上出来ですね』


片「この中断は、向井にとってもリズムを崩されたはず。

　 甘い球が来たら、逃さず仕留めろ！」


全「はい！！」



ここまで、両投手一歩も引かない投手戦。

この中断が、試合にどう影響するか...。

第百六十六話→←第百六十四話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す