″元″冷酷のマネージャー【御幸一也】

第百五十話 ページ16

先「〜を〜に代入すると...」



数学の授業中。


今回の数学のテスト範囲は広く難しいので、少しでも聞きそびれたら遅れてしまう。

そんな中、私はろくに話を聞かず、ボーッとグラウンドを眺めていた。


あの試合から、今日で三日目。

練習ではタイム走など、オフの合宿メニューが続いている。

当然ボールになんて触らせてもらえず、ずっと走りっぱなしだ。


自主練で打ったりはしているようだが、大丈夫だろうか。


他の授業もそんな感じで、あっという間に放課後となった。



吉「今日も走りっぱなしですかね？」


夏「多分ね。監督、あーなると長いから」



いつものメンバーでグラウンドに向かっていると、

グラウンドの方が何やら騒がしいのに気づいた。


四人で顔を見合わせ走って行くと、なぜか三年生が来ており、

これまたなぜか一年が土下座している。

二年も怒られているようだ。



貴『...これ、どういう状況なんですか』



近くで見ていた貴子先輩の元へ事情を聞きに行った。



藤「一、二年が歩いて来てたから、葛を入れてるみたい。

　 みんな受験勉強ばかりで、身体を動かしたくなったんだって」



そう言って、貴子先輩は意味ありげな笑みを浮かべた。

約十七年間、ずっと人の顔色を見てきた私には、

今の言葉の半分は嘘であることぐらい分かる。


三年生は確か、もう進路相談は始まっているはずだ。

その誰かが校長あたりに聞いたのかもしれない。


普通なら、引退試合は秋大が終わった後の十月末か十一月。

秋大が終われば監督はいなくなるから、試合の日付を早めてもらったのだろう。


みんながどう思っているのか知らないが、週末が楽しみだ。

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