″自称″冷酷のマネージャー【御幸一也】

第百二十話 ページ27

ミットを持って室内練習場へ行くと、沢村と降谷だけでなく、

御幸や倉持、その他一年、二年が多く集まっていた。



貴『何この人の多さ...』


春「自主練ついでにってみんな興味深々で...」



苦笑しながら、春市はそう答えた。

ならば早く自主練しろと言いたいところだが、

一年投手二人が急かすので何も言わないでおいた。



貴『最初はどっち？』


降「じゃんけんで勝ったので、僕から」


貴『じゃあ、まずはアップね』



アップからも分かる、降谷の球の重さ。

これにコントロールがついたら、間違いなく鳴と肩を並べられる投手になれるだろう。


あとは、決め球となる変化球さえあれば...。



降「あ、もうしゃがんでもらって大丈夫です」


御「お前、自分のプロテクターあんの？」


貴『ないけど...』


御「じゃあ俺の貸してやるよ。ちょっと待ってな」



御幸はそう言うと、室内練習場を出て行った。

御幸が戻って来るまで暇だと思っていたら、降谷が来て、

私にボールを差し出した。



降「A先輩、投手も出来るんですよね。見たいです」


貴『...誰から聞いたの、それ』


降「御幸先輩から」



どこまで話したのだろうかアイツは...。

断ろうと思っても圧が凄いし、仕方なく一球だけ投げることにした。



貴『何が見たいの？』


降「フォークで」


沢「あっ！ずるいぞ降谷！！」



しかも、中々の難題だ。

フォーク...投げれるかな。


重いのでミットを外し、マウンドに立つ。

人差し指と中指の間にボールを挟んだ。


足を高く上げ、思い切り踏み込み、腰の捻りを生かして、

腕を振り抜く___！



ヒュッ！



降「え...」



私が投げたボールは、降谷が構えたグラブへ直線上に進んだかと思いきや、

ベースに被った瞬間、地面に叩き付けられるかのように落ちた。


私のフォークは、他の人とはまた違った変化をする。


斜めではなくほぼ直角に落ちるため、初めて鳴に投げた時は、

「一瞬でボールが視界から消えたんだけど！打たせる気ないじゃん！」と、

理不尽な文句を付けられた。


というか、空振りを取るための球なのだから、打たせる気がなくて当然だろう。


一番得意という訳ではないが、特にキレる変化球の一つ。


降谷は、唖然とした顔で私を見ていた。

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