″通称″冷酷のマネージャー？【御幸一也】

第五十四話 ページ6

五回の表、先頭打者は例の人。

ここまでで2打点。これまでの試合を見ても、かなり打率がいいのは一目瞭然だ。

...あの笑顔がなければ、私としては文句なかったのだけど。


御幸もこの空気を断ち切る為に、降谷には三振で押さえて欲しいはず。

それでどうリードするのか気になったのだが...。


降谷が投げた球は一直線ではなく、軽く弧を描いて御幸の構えるミットに収まった。

...わざとかどうかはサインが見えないので分からないが、

もしそうなら、どう考えても相手を挑発しに行っている。


それが聞いたのか、バッターは大きく構え直した。

路線を変更し、本気で打ちに行くつもりなのだろう。


そんなバッターに降谷が投げたのは...。



貴『(...ストレート...！？いや、これは...)』



ストレートかと思われた剛速球は、スピードを緩めることなく下に落ちた。



藤「御幸君が後ろに逸らすなんて...」



アイツも人間だ。一度や二度、後ろに逸らすこともある。

けど今回は、完全に反応が遅れていた。


もしかして、ぶっつけ本番で投げさせたのか...？

そんな御幸への呆れと同時に、私はあのフォークとも言えない魔球に興味を持った。

今度頼んだら、また投げられるだろうか。


流れが変わり、降谷の調子が完全に戻った。

三人でバッターを終わらせ、

攻撃ではセンター後方へありえない飛距離のホームランを打った。


アレ、絶対にまぐれね...。


すると、観声に紛れて小さくミットの音が聞こえた。

そちらに目を向けると、御幸が沢村の球を受けているのが見えた。


次から沢村か...降谷よりはスタミナもあるし元気だが、大丈夫だろうか。


降谷に対しど真ん中に構えていた御幸が、インコースに構える。

多分片岡監督は、この試合次第で、夏に沢村を使うかどうか決めるつもりだろう。


沢村は、この一軍最終試験を乗り越えることができるのか___

第五十五話→←第五十三話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す