″通称″冷酷のマネージャー？【御幸一也】

第七十九話 ページ32

伊「っらしゃあぁぁぁぁ！！」



青道の攻撃、小湊先輩のバントで倉持を三塁に置き、

伊佐敷先輩がまるでお返しのように打球をフェンスに直撃させた。


そして、増子先輩の勝ち越しツーランで一気に逆転した。

御幸は案の定、ランナーがいないのでピッチャーゴロでアウト。

結城先輩のライナーを止められたのは予想外だったけど。


完全に青道ペースの中、降谷はキッチリ無失点に抑え、

バッティングではバックスクリーンに直撃させるホームランを打って見せた。


こういうところで、沢村との差がつくのよね...。


次の回の守備も、申し分なく二人で抑えた。

今日はいつにも増して降谷の調子がいい。

このまま二巡目も投げさせるのかと思いきや、沢村に継投させるようだ。



沢「ガンガン打たせて行くんで、

　 みなさんよろ...やっぱり打者集中で行きたいと考えます！

　 2アウトなもんで！走者なしなもんで！」



なぜわざわざ言い直したのだろうかコイツは...。

「もう一回深呼吸しとけ！」という声に「大丈夫！」と答えているが、

本当に大丈夫な気がしない。


打者が轟なのもあって、みんなの緊張が高まる。

そんな中、沢村の投げたストレートはど真ん中に投げ込まれた。


轟がそれに手を出さなかったこともあり、一瞬歓声が上がろうとする。

けれど、それは御幸の返球によって飲み込まれた。


御幸が沢村に、ボールを思い切り投げ返したのだ。

その光景に、スタンド全体がざわつく。



「な、何だ...今の返球...」


「全力で投げ返したぞ？」



...多分、御幸は出方をうかがうためにボールを請求したんだろう。

けど沢村が投げたのはど真ん中のストレート。

つまりは、御幸のリードを無視したことになる。


それだけのことなら、タイムを取ればいいだけの話。

だけどそうしなかったのは、この継投が勝利のための継投だから。


...分かってる、分かってるけど。

周りが戸惑う中、ソフトボールをやっていた時の記憶がよみがえってきて、

私はぐっと拳を握りしめる。



梅「A、なんか雰囲気怖いけど、どうしたの？」


貴『...別に』



心配そうに私の顔を覗き込んだ幸から目線を逸らしてそう答える。

...思い出したくもなかったのに...最悪。

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