かたち ページ12
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宗の入れてくれたアッサムミルクティーが冷えた身体に染み渡った。
絵を描きたい そう言ったものの、何を描こうかだなんて考えていなかった。
｢...私、何が描きたいんだろう｣
そう気づけば口に出していた。
自問自答するような言葉に彼は唸った。
『まずは原点に帰るべきじゃないのかね？』
｢原点...?｣
『描くことを好きになった理由のことではないのかね』
他はどうか知らないが、僕はそう思うよ
そう言って、口にティーカップを運んだ。
今更だが、彼は紅茶を飲むだけでも絵になる。
｢好きになった理由か｣
最初はクレヨンで絵を描くのが好きだった。
お風呂の石鹸みたいに紙の上を滑るのが不思議で、
面白かったから。
スマホのカメラでは写しきれない風景を目で"みた"世界を
絵では伝えることができるから。
......どれもこれも、なんだかしっくり来ない。
私はどうして絵を描いているんだろう。
黙りこくったまま、頭を抱えていると
彼がソファから立ち上がった。
軽く咳払いをしたあと、
『そろそろ夕食の時間だね
答えが出ない問題は一旦置いて、僕と買い物に行こう』
とポロコートを羽織った。
何となく、
気遣ってくれているのが分かった。
｢うん、行く｣
彼だったら、食事なんか忘れて答えが出るまで考えそう
だなんて思いながらスタンドカラーコートに腕を通した。
玄関へ向かうと、もう既に宗がいた。
私の方へ視線を向け、(というよりコートを見ていたが)
『寒いのだから襟は立てるべきだね』
と言いい、寝かせてたコートの襟を掴み
『全部のボタンをかけ、縦に長くラインを強調する』
素早く彼の納得いく かたち にし始めた。
私は棒立ちの状態で、彼にされるがままだ。
思い通りのかたちにできたのだろう、
彼は首回りへ注いでいた視線を私の方へと戻し
眉をひそめた。
『せっかく出かけるのだから、
服には気を配るべきなのだよ！』
全身を美しく、滑らかなシルエットに
見せられる魅力がこのコートにはあるのだから、
しっかり理解して着こなすのだよ
半ば説教のような彼の言葉を軽く受け止め、目を逸らし
｢わかった、わかったよー ありがとうね｣
と当たり障りのない相槌を返した。
そっと彼の方を見ると、なんだか不服そうだ。
『本当にわかっているんだろうね?』
そんな彼の言葉から逃げるように、玄関の扉を開けた。
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蒼也souya(プロフ) - ふわなさん» 感想ありがとうございます。本当に更新してなくてすいません。褒めていただけて嬉しいです！精進していきます…！ (4月5日 18時) (
レス) id: 2dcf8a9402 (このIDを非表示/違反報告)
ふわな(プロフ) - コメント失礼します！言葉選びや表現の仕方が綺麗ですごく素敵です！作者様の無理のない頻度での更新お待ちしてます。 (12月13日 20時) (レス) id: 58ec19c369 (このIDを非表示/違反報告)
蒼也souya(プロフ) - 浪越柊羽さん» 感想ありがとうございます！嬉しいです。優しいお言葉に小躍りしてしまいました。頑張りたいと思います！ (8月27日 6時) (レス) id: 2dcf8a9402 (このIDを非表示/違反報告)
浪越柊羽(プロフ) - 今まで数多くの作品を読んできた中で、この作品が一番のお気に入りです！時間も忘れて何度も読み返してしまいます、、！更新が楽しみです、気長に待っていますね…！ (8月21日 18時) (レス) id: f394f39020 (このIDを非表示/違反報告)
蒼也souya(プロフ) - 星さん» ご感想ありがとうございます！嬉しいです！本当に更新遅くてすいません。本当に申し訳ないです。待っていただけることが何よりもありがたいです！頑張ります！ (2023年3月13日 0時) (レス) id: 34086f5d07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼也(souya) | 作成日時：2021年9月30日 0時
