俺でも日々樹渉になるのは諦める

一人殺せば殺人者、百万人殺せば英雄｡一番身近な私は真っ先に死にます｡ ページ6

別に、すぐ帰れるんだけど｡
不可能はない。だって俺だから｡
でも、戻ってしまったらまたテンヤワンヤしだすんだろうし。


そんな感じで不貞腐れてたら、零と奏汰は俺の元へ来て言った｡



奏｢渉は、このせかいがたのしいですか？｣


と、ニコニコと笑って｡


零｢我輩とて、この世界は興味深いものも多い故名残惜しいが…矢張、愛しの魔物達が腹を空かせてないか心配なもんじゃよ｣


渉｢…なら、帰りますか｣



あぁ、結局そうだろうな｡

やっぱり、他人にそんな事言われちゃ逆らえないんだ｡
俺の幸せは、皆の幸せなんだって…そう生きてるんだから仕方ないけど｡



でも、少しは羽目を外したかった。

好き勝手生きることも出来なくなって、俺死んじゃうよ｡



★☆★


いつも通りの夢ﾉ咲学院｡

随分長い間居た筈なのに、何一つ変わっていなかった｡

奏汰と零の記憶はさっぱり綺麗に消えていた｡



貴｢…夢だったんだろうか｣



もしかしたら、今回だけじゃなくてさ｡

今までの全部夢だったのかな｡


普通は、俺だけ覚えてるとか有り得ないじゃないか｡
普通は、俺なんかがこの世界の奴に成り代わるとか可笑しいじゃないか｡

普通じゃなかったらそんな概念無かったよね？


あんな夢みたいな世界で｡
そんな世界見て｡



｢そんなの、夢でしか有り得ない話だ｣



★☆★


そのあと…あのアンティーク店に寄って、ふわふわした頭のまま不思議な体験を話したことを覚えてる｡



店主は、人をおだてるのが上手だ｡

だから、
昔はそんな営業についてたのか、と聞けば



｢うぅん…まぁgive and takeみたいなものだよ｡


おだてれば機嫌良くしてくれるじゃない？
懐に置いてくれて嬉しくないなんて感情持ってなかったし｡


昔の渉くんだって言ってたよ。


｢世界を美しいと言えば…褒めて愛してあげれば、愛を返してくれる｣ってさ｡｣




…あぁ、つまり。

渉の｢世界はなんと美しい｣って、"言われて嬉しかったらそのぶん返せ"って意味だったの｡


どんだけ飢えてたんだよ、ってツッコミいれたい｡



｢まぁ、世界を愛と幸せで満たしたら英雄扱いになるもんね｣


渉｢…誰かを亡き人物にしない限りは世界中を愛と幸せで満たせません｡

けれど。
一人殺せば殺人者、百万人殺せば英雄です。｣




彼のやりたいことリストに、人を殺すのが無い時点で…世界中を幸福にする、なんて不可能だったでしょう｡




そう呟いた時の店主は、悲しそうな顔をしていた｡

天才だから孤独になり,その孤独の忘れ方を知る為,又 天才になり更に孤独になる→←誰が大切かどうかは葬儀に行きたいかで決める

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