俺でも日々樹渉になるのは諦める

期待し羨むなら苦労も欲しがってほしい ページ37

果たして俺や彼奴に"青春"という時間はあったのだろうか。

愛を求めるだけの行為に楽しさなんてものはない｡全力でやるのが青春だなんてふんぞり返って分かったふうな口を聞く奴は殴ってやりたい｡
生きる事だけ全力でやってるだけだ、此方は細々した事まで計画をたてた全力なんだ。


物心ついた時から、良い子ってのを演じてきたのに。
そんな頑張りは、周囲からよく言われる"頑張ってる子はキラキラしてる"なんて甘ったるいものじゃなかった。
内蔵は本当にグチャグチャで気持ち悪くて、何度嘔吐しだろうか。


見た目が良いのを親は誉めてくれた。
でもそれは、社交辞令で跡取りとか取引のときに役立つからって理由だ。男が可愛い女の人を連れてデートするのは、高い時計をつけて街を歩くような権威の象徴だっていわれる、それに似た利用価値の為に出来た存在。

社交界の場で大切にされる。機嫌取りとかそんなもので誉めてもらえた自分だ。


毎日毎日芸を習得した。
そりゃ、最初の辺りで既に｢理解できない｣とかは言われてただろう。なんせ物心ついたばかりの子供が大人に負けず劣らずのショーを披露するんだから。
それでも社交界の奴等は機嫌取りの為に張り付けた笑みで｢すごいね｣っていうんだ。
そうして親も、有望な子には絶望して将来不安定になってほしくないから｢凄いね｣って。


渉｢ある日、いつものように日々樹渉が習得した芸を……。これ以上なく素晴らしい、他の誰にも真似できない芸を披露したのに…みんな、喜んでくれないのです。どうしてでしょう、不思議ですね？
みんな、日々樹渉の芸を見て文句を言うのです。『高尚すぎて、理解できない』とね！あっははははは…☆｣

ついに理解できなくなってしまえば、その子の将来の期待とか利用価値などの汚い欲望で染まった脳内は、一気に真っ白に染まりガタガタと震えだし途端に恐ろしくなる。
人間の想像できない範囲のものを実現しちゃえば、そりゃただの化け物だ。施設におくった方がいいの？なんてレベルだったかもしれない。


一瞬、ほんの一瞬。
涙を流して、一歩手前の日々樹渉自身を露にした。ここ最近ずっと外さなかった仮面を外して。


泣いてるんですか、その話本当なんですか。
恐ろしげな顔も同情する様子もなく、ただ淡々と無表情に少年は聞いてきた。


渉｢どうでしょう？私の舌が紡ぐのは、歌と馬鹿げた法螺話だけですけど？｣


この言葉さえも嘘だって思ってくれれば良い。
お前の見てる渉と俺は違うから

指をさして非難するその手が汚れてたなら親指を下に向ける→←自分の特技じゃなくて自分を大切だと言ってほしい｡

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