６ 意外な好み ページ6
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「＿＿んで最後に、ここがガーデンテラスだ。ま、簡単にいえば食堂だな」
『食堂...そういえば、ちょうどそろそろお昼時ね』
「だな。なんか食ってくか？」
『...そうするわ。今日は、案内ありがとう』
「気にすんな。どうせやることもなかったしな」
そう言って笑う紅郎に、「それはそれでどうなの」と突っ込みながら、食券を購入する。
結局、午前中いっぱい校内探索に使い、途中から案内してくれた紅郎と共に、昼食を食べることになった。
受け取ったトレーを持って机を探せば、すぐに赤と黒の特徴的な髪が視界に入る。
やっぱり元不良とあって怖がられているのか、人の多いガーデンテラスの中でも彼の周りだけ妙に空いていた。
『ナポリタンにしたのね』
「ああ、そっちは...オムライス、か」
『...？何よ？』
私の持つトレーと私の顔を見比べていた紅郎は、私が尋ねればふっと笑いをこぼす。
そして、少し笑いを堪えるような表情をして口を開いた。
「いや、俺がいうのもなんだけどよ。
厳しそうというかキツそうというか、人を寄せ付けないような雰囲気出してる割に、食いもんのチョイスがかわいいなと思ってな」
『かっ、.........何よ、文句あるかしら』
「いや、良いと思うぜ」
『あんただって、その強面に反して口にケチャップつけてナポリタン食べてるじゃない。
ほんと、人のこと言えないわ』
唐突に言われた「かわいい」という言葉に動揺しながらも、平静を装おうと、なんとか言葉をつなげる。
そして、紅郎の口元についたケチャップを指摘して、ハンカチを差し出した。
『これ、使いなさい』
「？良いのか？」
『ダメならやらないわよ。仮にもアイドルなんだから、清潔感くらい保ちなさい』
「...おう、ありがとな。今度洗って返すわ」
『別に、使い終わったら捨てていいわ』
律儀に洗って返そうとする紅郎にそう伝える。
安物の無地のハンカチくらい使い捨てればいい。
そういうつもりで言えば、紅郎は釈然としない、と言いたげな表情を浮かべながらも、ハンカチを受け取った。
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作者名：速川 薫 | 作成日時：2024年3月23日 12時
