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ふと…そんな事を思う不死川の脳裏には、



以前、黒羽と交わした会話が思い起こされる。
















『___不死川さんって…確か前に、文字が書けないって言ってましたよね。』



『私が教えてあげましょうか?…アンタは手紙くらい、書けるようになった方がいいかと思いますけどね。』



街中を共に歩く中、不死川は黒羽からそんな言葉を投げ掛けられ



その言葉を聞いた不死川が『何でだァ』と一言尋ねると



『だってアンタ、超がつくほど不器用でしょう。』



『肝心な事は何一つ口にしない…面倒臭い男の代表格ですからね。』



『面と向かっては言えない事でも、手紙なら伝えられるってよく言うでしょう。…って事で、まず手始めに私宛の遺書でも書いてみて下さいよ。___』



『何で遺書だァ…俺が死ぬ前提で話進めンじゃねェ』



黒羽はそう告げると同時に、懐から手紙を取り出し



『まァ…口頭から手紙に変えたところで、何でも言えるようになる訳じゃないですけどね…。___』



そう呟きながら、黒羽は付近にあった郵便箱へと手紙を収めていく。



その後、黒羽は不死川の方へと向き直り



『…では、今から不死川さんの奢りでお食事に行きましょうか。___』

















不死川はかつての記憶を思い起こした後、



「(あの時…アイツが出した手紙の宛名____)」



僅かに見覚えのある名を思い出し



「(…行ってみるかァ、)」



自身の屋敷へと背を向け、不死川は一人何処かへと向かっていく。

















「(___相変わらず…でけェ屋敷……。)」



『九條』と表札が掲げられた屋敷を見上げながら、ふとそんな事思った後



不死川は敷地内へと足を踏み入れ、戸を叩く。



数分もしないうちに、屋敷の中からは一人の男が不死川を出迎え



「…不死川くん、久しいね。元気にしてた?」



九條がにこやかな笑顔を向けながら、そう尋ねる中



「アイツ…紫、此処に来てねェかァ」



不死川は九條の問いに答える事なく、そんな言葉を投げ掛ける。



「紫…?紫は鬼殺隊に入隊してからは、一度も会ってないよ。」



「本当…白状だよね。手紙の一つや二つ、出してくれてもいいってのにさ。」



「(……、)」



そう告げる九條に対して、不死川は訝しげな目を向けた後



「随分と…屋敷の中、綺麗にしてるみたいだなァ」



「昔上げてもらった時は…『片付け出来ねェ』とか言って、散らかってたってのによォ」

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作者名: | 作成日時:2023年11月1日 0時

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