37.話しかけてきた男 ページ37
[A]
無我夢中で走り続けて
どのくらい経ったんだろう…。
気がついたら
全然知らない街に来ていた。
走るのも疲れて、
近くのベンチに座って考え込む。
酷い事を言っちゃったな…。
去り際のジュダルの寂しそうな顔を思い出す。
もしかして、ジュダルもアルサーメンに好きで
居てないのかもしれない。
そもそも銀行屋が私の国に来た時、
ジュダルはいなかった。
居たのは綺麗な女の人と、帽子をかぶった男だけ。
どうして気づかなかったんだろう…。
ジュダルは私の国の内戦を起こした出来事に
関わっていなかったんだ…。
A「はぁ………何やってるんだ私は…。」
『こんな暗い時間に、1人か？』
え？
気がついたら私の目の前に知らない
貴族のような格好をしてる男の人がいた。
この人、全く気配がなかった。
いつのまに私の前に……！
『いやはや、本当に美しい。
今夜の月の光に照らされてその美しさも増してるな。』
A「貴方は…誰？」
『おや。俺の事を知らないのか。紅炎のやつめ、
俺の情報くらい教えれば良いものを。』
紅炎さんと知り合い？
初対面なのに驚くほど上から目線だな。
『俺は煌帝国と友好条約を結んでいる隣の国、
夏那国の第1皇子、黒冥(こくみょう)であるぞ。
貴殿の事は、陽国の皇女との決闘で拝見した。』
A「名乗られたなら、私も名乗り返す。
私は煌帝国『パルミラ王族、第1王女』……！？」
この人、私のことを知っている！？
何処かで会った人なの？
黒冥「誤魔化すな王女よ。
俺の国は煌帝国と同じくらいの勢力がある国。
パルミラ王国の情報を知らないわけが無い。」
なんだろう…
さっきからこの人と話してると体が訴えてる。
早く逃げろと。
震えそうな体を必死に抑えてる。
この男からは、邪悪なオーラが強く出てる。
恐らく運命に対して相当な
恨みや執着を持っているんだろう。
A「そんな一国の皇子が何か用ですか？」
黒冥「今日はあの神官殿はいないんだな。
なら話が早い。
俺と婚約をしろ。パルミラ王女よ。」
A「は………！？
いきなり来てなんなんですか。
そもそも初対面だし…。」
黒冥「俺はそこらの女には興味ない。
お前はあの狂人なマゴイ量を持っている
パルミラ族、更には王女。
そしてその美顔、あの強さ、
そんな女をこの俺が手に入れなくてはどうする。」
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作者名：花月 | 作成日時：2020年9月23日 3時
