其ノ弐 ページ8
霊媒師の仕事を終えた私は､帰路に着いていた｡賑やかな夜の城下を抜けると､田んぼや畑に囲まれた閑静な道に出た｡いつもと変わらない景色｡なのに､人を殺した後は､酷く不安になった｡同時に凄まじい孤独を感じた｡
そんな気を紛らわすように､鼻歌を歌っていたら､前方から悲鳴が聞こえた｡子供のものだ｡
(何だ?)
顔を上げると､恐ろしい見た目をした妖が少女を喰おうとしていた｡あれは､自分を制御出来ないほど狂ってしまった妖だ｡少女にも見えているのだろう｡
だが､私には関係ない｡こんな夜に出歩いているあの小娘が悪い｡そう思い､姿を消しながら､そいつらの近くを通る｡瞬間､見たくもないのに､少女の顔を一瞥してしまった｡
｢助けて!誰か!!嫌だ!!誰かぁぁ!!!!｣
止まることのない涙｡恐怖に怯えた目｡震える身体｡
[いやだ!やめて!いやだあぁあああああぁああああ!!!!]
その哀れな姿が昔の自分と重なった｡刹那､頭痛が私を襲い､私はその場に立ち止まった｡
やかましい｡騒ぐな｡助けを求めるな｡そんな姿を私に見せるな｡うるさい｡耳障りだ｡目障りだ｡やめろ｡
そう心で叫び､少女を無視しようとするものの､それは出来なかった｡私には､出来なかった｡
踵を返し､妖を少女から引き剥がす｡妖も少女も驚いたような目で私を見た｡妖は､私も妖怪だと認識したらしいが､空腹が強いらしく､襲いかかってきた｡
拳に妖気を溜める｡それを一気に妖に向かって放った｡妖の断末魔の叫びが響く｡同時に､妖は跡形も無く消えてしまった｡
(すまない｡どうか､許してくれ)
今のは､浄化でも退散させたのでもない｡妖力で殺したのだ｡妖力は私の方が上だったらしい｡死んだ妖は､どうなってしまうのか､私にはわからない｡ただ､幸せになってほしい｡そう願った｡
その時､後ろから少女が抱きついてきた｡
｢お姉さん､ありがとう｣
泣きながら､そう言って｡
｢大丈夫｡安心していい｣
抱き返した｡確かに伝わる人の体温は､とても柔らかく｡久々の温もりに､胸が締め付けられた｡
｢家はどこだ?｣
｢お城がある方｣
城下か｡来た道を戻らなければ｡
手を繋いで､城下へ歩き出す｡少女の身体から離れると､私は見えなくなってしまうから｡その道中で､少女が目の前を指さした｡
｢お姉さん､あれ｣
少女の指の先を見る｡何かがいる｡
(あの髪色は…)
…褌野郎だ｡
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ずお - これは……左近推しにとって嬉しい！城に行って半兵衛様にも会って欲しかったたり……します。 更新楽しみに待ってますね！ (2020年2月24日 14時) (
レス) id: 8a05a5b115 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天国水晶 | 作成日時：2019年2月18日 22時
