800年【戦国BASARA】 (ページ3)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:6,377 hit

其ノ弐ページ3

｢そこで､女が振り返ると……｣
｢ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!｣

真夜中だというのに､悲鳴をあげながら､男が布団を被った｡

｢やかましいぞ､左近｡静かに聞け｣

傍にいた男が､左近と呼ばれた男の布団を剥ぐ｡左近は腰が抜けたらしく､立ち上がれずにいた｡

｢無理だってぇ…なんで怖い話なんかするんすかぁ…｣

左近が半泣きで､訴える｡それを見た語り手は､おかしそうに笑った｡

｢ヒヒッ､主は誠に愉快よ｡ユカイ｣
｢酷いっす｡刑部さん｣

それを見て､左近が不服そうに頬を膨らます｡刑部と呼ばれた男は､怪談の書いてある書物を閉じた｡彼の本名を吉継という｡

｢なして､そのように妖を怖がるのよ?｣

そう尋ねると､左近は首を傾げた｡

｢うーん…特に理由は無いんスけど､何か…怖いっしょ?取って食われそうな気がして｡分かりません?三成様｣

それ聞いて､三成と呼ばれた男が呆れたように､ため息をついた｡

｢むしろ､取って食われろ｣
｢えぇ!?そんな殺生なぁ…｣

左近がまた泣きそうになっている時に､吉継がゆっくりと立ち上がった｡

｢やれ､三成｡そろそろやめにするか｣
｢同意だ｡刑部｣

三成と吉継は立ち上がり､左近の部屋から出ようとした｡左近が｢え?｣と目を瞬かせる｡

｢では､これにて御免する｣
｢ごゆるりと休むが良い｣

三成は至って普通に出ていった｡吉継はニヤニヤしながら､三成の後に続く｡左近の顔から血が引いていく｡

｢ひ､一人にしないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!｣

左近が急いで､2人を追いかけた｡三成の罵声が飛んだ｡
❁⃘❁⃘❁⃘
(うぇ､まずっ…)

私は口に入れた人肉を吐き出した｡
さすが､こんな腐った肉は食えないか｡

(疲れたな)

空腹のまま､私は自分の家に戻り､ゆっくりと座り込んだ｡
妖になってから､私はこの小さな祠を家としている｡屋根も家具も壁も何も無いけど､他に行くあてが無いから｡

(奴らが私を殺されなければ､生贄にしなければ､私は今頃､妖なんかじゃなく､生まれ変わって人として…)

瞬間､頭痛がした｡何かが私の脳を押し潰そうとしているような｡捻り潰そうとしているような｡
いつもこうだ｡昔のことを考えると､頭痛がする｡思い出せと言っているのか､それを拒んでいるのか｡自分でもわからない｡ただ､何かを私は忘れている｡

｢…｣

戻りたい｡かつての私に｡そして､愛されたい｡
こんな醜くなった私を愛してくれる人と出会いたい｡