足音12 ページ13
カーン、カーン、カーン。
鎚が玉鋼を打つ音というのは、何度聞いても心地良い。
同じ音は一つとして無く、材料の具合によって僅かに音が変わる。
その音は刀になろうとする、意思ある玉鋼の声のようにも聞こえて。
それを聞き入れ形にするのが鍛冶師の仕事だ。
…私が勝手に思ってるだけだけど。
「精が出るねィ」
「あ、いらっしゃいませ沖田さん!キリの良いとこまで仕上げちゃうのでちょっと待っててください」
「おー。急ぎじゃねーからゆっくりで良いぜィ」
最高の刀を作るには、作業の手を途中で止めるわけにはいかない。
待たせてしまうのは申し訳ないが、沖田さんもこう言ってくれていることだしお言葉に甘えて良いところまで仕上げてしまおう。
愛用の鎚を握り直し、私は再び鋼を打った。
「すみません、お待たせしました。この時間に来るってことは、刀の手入れ依頼ですか?」
作業に区切りがついたのは、沖田さんが来てからだいたい30分程経った頃だった。
その間沖田さんはずっと私が作業しているところを工場の隅で眺めていたらしい。
そんなところ見てて楽しかったのだろうか、いや多分暇だったろうなぁ。
やっぱり申し訳ないことをしてしまった。
「おぅ、近ェうちにそこそこでけー討ち入りがあるんでィ。おめーの刀の斬れ味は衰え知らずだが、万全の状態にしとくに越したこたァねーと思ってな。頼めるかィ」
「はい、任せてください!いつも通り、完璧に仕上げて見せます!」
随分待たせてしまったにも関わらず、沖田さんは文句ひとつ言うことなくいつも通りに接してくれた。
よく真選組の人が沖田さんのことを”サディスティック星の皇子”だの”他に類を見ない程の鬼畜ドS”だの色々言っているけど、全然そんなことはないと思う。
もし本当にそんなドSなら、こんな普段通りの対応なんてしないよね絶対。
きっと皆さんが大げさに言ってるだけなのだ。
いつも通り沖田さんから菊一文字を受け取り、早速作業に入る。
鞘から抜いた刀身は何度も血を浴びた筈なのに、未だ打ち立てほやほやのような輝きを保っていた。
こまめに手入れしているのもあるけど、それ以前に沖田さんが大事に使ってくれてるからなんだと思う。
渡してから結構経ってるし使用頻度も半端ない筈なのに、未だ刃欠け一つない。
これなら軽く研ぐだけでも十分だろう。
150人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
影咲 遥(プロフ) - AYAKAさん» 騙されてくださってありがとうございます(3人目)騙す気満々で書いたのでとても嬉しく思います。是非他の作品も読んでやってくださいませ!コメントありがとうございました (2019年12月30日 14時) (レス) id: d73cf733f9 (このIDを非表示/違反報告)
AYAKA - 沖田くんが!騙された!他の作品も見たいと思ってます!応援してます (2019年12月27日 20時) (レス) id: ab2e31f108 (このIDを非表示/違反報告)
影咲 遥(プロフ) - らーめん【受験の為活動休止中】さん» 返信遅れてごめんよありがとう!他のと違うストーカーをコンセプトに書いたからそう思ってもらえて嬉しいぜー。次回作も沖田くんだからお楽しみにー。 (2019年9月1日 20時) (レス) id: dd3bdf5d99 (このIDを非表示/違反報告)
らーめん【受験の為活動休止中】(プロフ) - 完結おめでとうう!(こんな時間にすみません)ストーカー系の中でもこの作品は特に他のと違っていてとても面白かった!次回作楽しみにしてるね! (2019年8月27日 0時) (レス) id: 74d4a343bf (このIDを非表示/違反報告)
影咲 遥(プロフ) - 沖田夕重さん» 騙されてくださってありがとうございます(2人目)。そんなに気に入って頂けるなんてとても嬉しいです、なるべく1日1回は更新するつもりでいますので是非また読んでやってくださいませ!夕重様も更新頑張ってくださいませ!← (2019年8月5日 22時) (レス) id: d73cf733f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:影咲 遥 | 作成日時:2019年7月2日 12時