【銀魂】影は貴女のすぐ傍に【沖田総悟】

足音13 ページ14

「相変わらず大切にしてくださってるんですね、この子も喜んでますよ」

「人斬りまくってるんでな、ヘソ曲げられちゃ困るから自分でもそこそこちゃんと手入れしてやってるつもりでィ」

「人を護るために振るわれる刀はそんな簡単にヘソ曲げたりしませんよ。まぁ大事にすればするほど応えてくれるのはその通りですけど」


刃の美しさを損なわないように、最低限かつ丁寧に菊一文字を研いでいく。
あまり研ぎ過ぎれば刃の消耗にも繋がるし、研ぎが甘ければ斬れ味が落ちる。
その匙加減を上手くできるかどうかが、鍛冶師としての腕の見せ所だ。


研ぎ終えた刀に専用の油を塗り、その仕上がりを見る。
うん、今日も上出来。


「はい、出来上がりです!どうぞ」

「おー。流石、相変わらず良い仕事っぷりで」

「お褒めにあずかり光栄です」


刀の仕上がりは沖田さんのお気に召したようで、菊一文字はスルリと納まるべき鞘の中へと帰っていった。
刀が鞘に納まる瞬間の音も、何度聞いても心地いい。


「そーいや、ちィと夜に仕事入っちまってねィ。なるべく早く終わらすようにはするが、多分今晩は来れねェ。だから帰る時十分注意しろィ」

「あ、わかりました。最近あの視線感じないですし、多分大丈夫ですよ!お仕事頑張ってくださいね」


沖田さんが帰り道の護衛してくれるようになってから既に1週間が経つけど、この1週間で例の視線は今のところ1度も感じてない。
やっぱり警察が傍に居れば追っかけて来れないんだろう。
このままストーカーが消えてくれれば万々歳だ。


「油断すんじゃねーぜ。今日は買い物とか寄り道せずまっすぐ帰れ」

「OKです、食材も買い置きがありますから問題なしですよ」


私の言葉に満足したのか、軽く頷いた沖田さんは代金を置いて、"じゃーな"と手を振りながら帰っていった。
久しぶりに一人で帰る夜だけど、きっと大丈夫だよね。


ずっと沖田さんに甘えているわけにもいかないし、一人でも心配ないってことを証明しよう。
仕事には全く関係ない決意を胸に、私は中断していた作業を再開させた。

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