『ゆうくん』と『泉さん』 ページ46
.
「あ、見ぃつけたぁ…！！……桜瀬A…♥︎」
澪がAを一眼確認して、スキップをしながら近寄ってくる。
『へっ…！？』
カバンを掴まれたAは、思わず街中で大声を出してしまう。
「わたし、覚えてる…？司きゅんの限界オタクのぉ…♡本名は佐倉澪って言いまぁす！実はねぇ、わたしも【GIC】に出ることになりましたぁ。よろしくぅ♪」
澪が頬に手を当てて、うふふと笑っている。頬を少し赤らめて、地雷服コーデの彼女はAを上から目線で見つめる。
『っは、はい………そうですか……』
Aは口を震わせながら答える。腕も足も体もプルプルと震えていて、目まで見開いている。桜河サクラや澪からあの時の寄せられたアンチコメントを思い出すと、思わず怖気付いてしまうのだ。
…
Aのことを街中でスーッと見守っている人影が2人。
『や、やめ…てくださ…い』
澪のことを最初は無視しようとして、歩き進んでいたAだったが、段々足取りは重くなり、その場にしゃがみ込んでしまう。
「っえ〜？ESの人気女性アイドルになるはずの桜瀬Aさぁん♡なんでそんなところにうずくまってんのぉ？これじゃあ【GIC】じゃ優勝できないよぉ…？んふふ♪」
澪がすかさずAに言葉で攻撃をする。Aはさらにうずくまり、手で耳を抑える。顔も青くなり見る限り今にも倒れそうだ。
その後ろで「ゆうくぅぅぅぅぅぅうううぅぅぅん！！！！！！」と叫んで、真を追い回している泉の姿が確認できる。
「ちょっ、ちょっと待って…ゆうくん、あれ…見て」
泉が一瞬止まって、真がすぐ確認できるように指を差す。
「あれって……ねえ、泉さん…僕に考えがあるんだけど」
「ふぅん……ゆうくん、俺も同じ考えだよぉ？それじゃ、行こっか」
泉と真がゆったりと足取り重く、Aと澪の元に進んでいく。
「ちょっとアンタ〜？人の大切なものに何してくれてんのぉ〜？」
「安心してAちゃん。僕は君の味方だよ」
泉は澪の肩に手を置き、真はAをそっと抱きしめて安心させる。
Aはホッと安堵したのか涙をほろりと流して、澪は驚きで動きを固めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：梓詩織 | 作成日時：2022年10月12日 21時
