2.満たされないもの ページ2
まさか正宗との計画を黎斗に嗅ぎつけられたか、、、そう思って無表情のまま焦る気持ちを抑えて黎斗の次の言葉を待った。
長い足を解いて黎斗は椅子から立ち上がるとAの顔をゆっくりと覗き込む。
黎斗「そろそろ私に心を開いてくれても良いんじゃないかと思ってね」
黎斗の指がそっとAの頬に触れる。
甘く見つめる黎斗の視線に、またその話かと少しほっとする。
A「では制作発表会の後の予定については流動的に後日でも対応可能にしておきます」
無表情のままで答えるAに黎斗はいつもならあきれた笑顔で離れてくれるのだが、今日は諦めが悪い。
頬に触れた指を離すどころか、両手掌でAの顔を優しく包む。
黎斗「どうすれば君は私に笑ってくれるんだ?」
A「社長がその手を離して下されば。」
黎斗「普通の女なら、私にこうされたら可愛く頬を染めてドキドキと鳴る胸の音を聞かせてくれるんだけど」
A「ご期待に添えず大変申し訳ありません」
Aは黎斗の手をすり抜けて社長室を出た。
残念ながら私は普通の女じゃない。
私はバグスターだ。
あんな事で気持ちが揺れたりはしない。
Aはまたヒールをかつかつと鳴らして廊下を歩いた。
廊下の突き当たりの大きなガラス窓に映る自分の姿を見てふと立ち止まった。
窓の外の青い空に自分の姿が透けて映る。
無表情の自分の顔がふと寂しそうに見えた。
宿主の記憶を思い出した時の気持ちと真逆の気持ちに気付いていた。
私は孤独だ。
心の中が暖かくもならない。
嬉しくもならない。
笑いたいとも思わない。
ただ、正宗の計画を黎斗に知られない様に着実に遂行していくだけ。
バグスターの世界を作るためだ。
だけど、ふと寂しくなるのは何故だろう?
宿主の記憶の様に誰かの暖かい胸を知らないからだろうか?
自分を慈しんでくれる瞳を見た事がないからだろうか?
Aはまたため息をついた。
時々、自分の思考が理解出来なくなる。
ゼロデイからもう5年。
黎斗を支えるフリをしてクロニクルも計画通り進ませて来た。
正宗の刑期が終わるまでに自分がやるべき事は順調に行っている筈なのに、心はちっとも躍らない。
満たされないのは何故だろう。
5年間突き進んできた自分の気持ちが、何故か最近乱される。
きっと黎斗に触れられる様になってからだ。
宿主の記憶の中の瞳が誰なのかと、いつの間にか考えている自分にも苛立ちを覚えていた。
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大崎舞子(プロフ) - kojiさん» 最後までお読みいただきありがとうございます!大好きだなんて、、うれしいです!!大人セクシー路線の黎斗とグラファイト、お楽しみいただけて良かったです! (2018年6月12日 21時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
大崎舞子(プロフ) - Hyuiさん» 皆さんにご理解頂けるか謎過ぎたグラファイトとの関係ですが、ホッとしました! (2018年6月12日 21時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
大崎舞子(プロフ) - moon791さん» いつもコメントありがとうございます!とても励みになりました^_^書けば書くほどグラファイトを好きになって大変でした爆 またどうぞよろしくお願いします! (2018年6月12日 21時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
大崎舞子(プロフ) - 双羅さん» 最後までお読みいただきありがとうございました!こんな夢主ちゃんを受け入れてもらえるかちょっと不安だったのですが、ありがとうございます!貴利矢も大好きなので頑張ってみます! (2018年6月12日 21時) (レス) id: 82a79b3fc1 (このIDを非表示/違反報告)
koji(プロフ) - お疲れ様でした!相変わらずの素敵な神とグラファイトにやられます。いつも楽しみで仕方ないです!大好きです!爆 又楽しみにしてます! (2018年6月12日 20時) (レス) id: 91fefba221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おおさきまいこ | 作成日時:2018年5月17日 17時