◇ ページ37
微睡みの中、再び空を見上げれば、まるで夜のうちに汚れを全て洗い流したかのように澄み切っていて、遠くの方で橙のグラデーションを作っている。
その光景が、素直に美しいと思えた。
細く白光を放つ朝日が眩しくて、そっと目を窄める。心地よい暖かさに体を包まれているのを感じて、また眠気が襲ってきた。二、三度はその眠気に抗おうと重い瞼を持ち上げていたけれど、結局諦めてしまう。だって、ほら。まだ町すら起きてないのだから。この楽園を享受してしまっても、誰も文句は言えないだろう。
再び閉じようとする瞳を、今度は抗うことなく受け入れた。
◇◇
『凪砂に物語を書くね!』
まるで世界中丸ごと輝かしい宝箱だとでも言うかのように、顔いっぱいに幸せを広げた彼女に心臓を撃ち抜かれた。
使い古された言葉では到底表現出来ないけれど、ああ、もし、それでもいいなら、例えると君は光に似た無垢なひとだった。自身が眩い光を放つから、何にも染まらない。
だから、私は君に興味を持ったんだ。
____故に決してそれは、凡人と一線を画すような才能に惹かれたわけでも、賞賛と栄光に飾り立てされたその
何かを成したという事実ではなく、ただ君自身が好きだったのに。
「____私はもう、書けないの!!」
君は、変わってしまったね。
光明は姿を眩ませた。君は今にも色が抜けて消えてしまいそうな頰を引攣らせ、まるで自身の心臓を自分で突き刺すようなことばを吐くものだから、その背に手を回しぎゅうっと抱きしめた。そうして、出来るものなら君が自分自身に突き立てた呪縛の刃を、溶かしきってしまいたかった。
悩むのは純真であるから。絶望を
されど、私は構わない。
それで君が、この手の中から離れていかないのならば。
「……閣下のそれは」
____彼はらしくなく、困ったように笑った。いや、ただ「困っている」と一言で表すには複雑すぎる表情で、薄く唇の端をあげた。
「もしかして、自分の所為ですか?」
ゆるやかに風が流れ、髪を揺らして去って行く。……ああ、ごめんね。
「……皆式、影響を受けていないとは言えないけれど。茨のせいじゃないよ」
何故ならこれは、私だけの
.
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更科(プロフ) - 緋褪さん» コメントありがとうございます、代表で主催より失礼致します。緋褪さまの中に何かを残せたようで、私まで嬉しく感じております。小説を書かれた暁には是非読ませてくださいね。楽しみにしています。このパレードが貴方の中で輝き続けますように。 (2018年8月31日 13時) (レス) id: d6f890f9ad (このIDを非表示/違反報告)
緋褪 - それぞれの色が鮮明に浮かぶようで、うっとりしてしまいます。大変感動しました。自分も執筆など嗜みますゆえ、夢小説にも手を出してみようと思います。可能性を広げてくださりありがとうございます。本当に素敵な短編集でした。長文失礼致しました。 (2018年8月31日 12時) (レス) id: 75c20a22b8 (このIDを非表示/違反報告)
緋褪 - 初めて夢小説というものに触れ、あまりの美しさに溜息が漏れました。作者さまひとりひとりも有名でいらっしゃるようなのですが生憎触れてこなかったので存じ上げなかったため、これから皆様の作品も読んでいこうと思います。(連投失礼します。) (2018年8月31日 12時) (レス) id: 75c20a22b8 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - 更科さん» こちらこそご丁寧な対応ありがとうございます。更科さんや他の作者様の小説もこれをきっかけに読み出し、また、素敵な世界を見させて頂いてます。本当にありがとうございます。 (2018年8月30日 22時) (レス) id: 2db1ed06cc (このIDを非表示/違反報告)
更科(プロフ) - 神桜佳音さん» 丁寧な感想ありがとうございます。返信遅くなりすみません、代表で私より失礼致します。主催ながらほんとうに綺麗に仕上がったと感じております。お体が弱いとのことで、本パレードが貴方の力になることを心よりお祈りします。 (2018年8月30日 21時) (レス) id: d6f890f9ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Parade!! x他6人 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月15日 21時