種明かし/3(sideニナ) ページ35
「まず最初、傷害事件が起こっただろう?あの話を聞いたとき、僕はまさかと思ったよ。確かにAちゃんは突飛だけれど、人を傷つけるような人ではないと思っていた。だから__君の監視を渉に頼んでいたんだ。そして数日後、君とAちゃんが話しているところを目撃したと聞いた。……もうそこで、君が黒幕だと分かっていたんだよ」
得意がる様子もなく、ただ経緯を説明するように淡々と彼は言う。
「それから、引き続き渉に君たち二人の監視はしてもらいながらも、君を泳がせることにした。生徒会にはAに近づくなと命令し、君を守るように仕向けた。君が一手先を読むなら、僕は二手先を読むようにした。……じゃあ、僕が何故君が黒幕だと明かさず、今まで君を泳がせていたのか」
そこで言葉を切り、彼はちらりと後ろを見た。その視線の先には、二階へ通じる階段があったはずだけれど。
「ついておいで」
音もなく踵を返し、歩き始める天祥院。大人しく従うのは納得いなかったけれど、どうせもう全て気づかれているのだから。彼が何をしたかったのかは単純に気になるし、私も足を進めた。返事をしなかったのは意地だ。
階段を登ると、ステージを見渡せる場所についた。とはいえ、ここは舞台裏だから一般人は立ち入り禁止になっているのだけど、プロデューサーなどはここから舞台を見ることが出来るようになっているのだ。
「見て、knightsのお出ましだよ」
ワァア、と一際高い歓声が響き渡った。いつのまにか、fineのライブは終了していたらしい。流星のようにあしらわれた宝石の装飾に、紺碧の長いマントが揺れる。『星雨祭』の衣装を見にまとった騎士が、ゆっくりと舞台に登壇した。
しかしその表情は、まるで死地に向かうかのごとく険しい。
「僕はね、見てみたかったんだ」
ふと、隣にいた彼がそう切り出した。
「だからあの子の周りに敵を作り、君を泳がせた。あの子がどんな風に危機を乗り越えるのかが見たかった。そして何より、たかが一人の少女の為に彼らがどれだけ頑張れるのかが知りたかった。……ほら、見てよ。今日のパフォーマンスはいつもの数倍凄まじくて、僕も身震いしてしまいそうだ。ああ、ここまで出来たんだね、素晴らしいよ……!」
舞台を見下ろしながら、彼は恍惚とした様子で呟く。その表情に、ぞっとした。
「まさか、それだけの為に__」
私の質問には答えず、彼は微笑する。
「……ああ。主役の登場だね」
その視線の先、階段の側で立っていたのは彼女だった。
「ようこそ、Aちゃん」
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べベンべエエェェ - また戻ってきました!この作品がお気に入りになってどの小説の設定も星川、というのを使わせて読ませてもらってます!ありがとうございます! (2022年6月9日 23時) (レス) @page29 id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
ベベンべエエェェ - またニナが足を洗って帰って来てほしいかなと思います。続編が出来たらとっっっっぅても嬉しいです (2021年8月4日 21時) (レス) id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
CloveR(プロフ) - 面白すぎて2日で読み終わりました……。(続き気になりすぎて2日とも5:00くらいまで寝れなかった)寝る前に読んだの後悔するくらいおもしろかったです…! (2021年7月29日 3時) (レス) id: f7412586d4 (このIDを非表示/違反報告)
髪様 - ゆうさんと同意見です,完璧ですわあ、、、、 (2020年5月8日 11時) (レス) id: a311e75dfe (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - なんだろう、なんて言えばいいかわかんないんですけど...完璧な小説でした (2020年4月25日 18時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
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