反転と激励/1 ページ16
「……これで本当に良かったのかなぁ」
____一方その頃。私は一人屋上で膝を抱えながら、空を眺めていた。ああ、太陽が眩しい。風は少し冷たいけれど、絶好のライブ日和だ。
……なのに私は、仕事もせずにどうしてこんなところにいるんだろう。
「いや、理由は分かってるんだけど!ニナのせいなんだけど!」
なんて、誰もいないところで言い訳がましく言ってみるけど、誰も聞いてないし。なんなら、逃げたのは私なのだ。
____『もしそれを使って私を出し抜こうとしているなら、明日のライブがどうなるか分かっているのよね?』
星雨祭前日、ニナは証拠を持っていこうとしていた私にそう言った。
『そもそも、会長は私の味方よ。貴方の言うことなんか、耳に入れてくれないわ』
その言葉を聞いて、つい怯んでしまったのだ。確かに、会長が信じてくれるかなんて分からない。最悪の場合、私が嘘をついていると思われてもおかしくないのだ。そしたら、knightsの皆にも迷惑がかかる。
だから私は、合流して一緒に証拠を提出する予定だったknightsの皆に「予定が変わったから証拠を出すのは今度にしてほしい」と連絡し、そのまま端末の電源を落とした。もしかしたら理由を聞くメッセージが沢山入っているかもしれないけど、返事は出来ない。
だって私は、ニナと約束を交わしたのだ。
『貴方の大好きなアイドルを傷つけたくないでしょう?私に任せてくれれば、ライブは上手くやってあげるわ』
『……ならもし、私が何もしなかったら……アイドルの皆の邪魔はしないって、ライブを成功させてくれるって約束する?』
『貴方の行動次第ね』
可愛らしい顔を、さらに美しい花が咲くような笑顔に変えて、彼女は言った。
だから私は、何も手だしをしないでおこうと、わざと会場から離れたこの屋上に隠れたのだ。
……でもやっぱり、皆がライブを頑張っている中で自分だけサボるなんて罪悪感がある。それに、私が手がけたステージは近くで見たいよ!!
そんな気持ちと、「私が下手に動けばニナがライブをめちゃくちゃにするかもしれない」という不安が交互に現れて、私は屋上のドア付近をウロウロする変質者みたくなってた。ここが一般の道なら5.6回は職質されてるよ。
と。
突然、屋上の扉が大音響を立てて思いっきり開く。入ってきた人物と目があった瞬間、私は悟った。
……屋上の扉に鍵かけるの忘れてた。
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べベンべエエェェ - また戻ってきました!この作品がお気に入りになってどの小説の設定も星川、というのを使わせて読ませてもらってます!ありがとうございます! (2022年6月9日 23時) (レス) @page29 id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
ベベンべエエェェ - またニナが足を洗って帰って来てほしいかなと思います。続編が出来たらとっっっっぅても嬉しいです (2021年8月4日 21時) (レス) id: ce3d8a7ebf (このIDを非表示/違反報告)
CloveR(プロフ) - 面白すぎて2日で読み終わりました……。(続き気になりすぎて2日とも5:00くらいまで寝れなかった)寝る前に読んだの後悔するくらいおもしろかったです…! (2021年7月29日 3時) (レス) id: f7412586d4 (このIDを非表示/違反報告)
髪様 - ゆうさんと同意見です,完璧ですわあ、、、、 (2020年5月8日 11時) (レス) id: a311e75dfe (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - なんだろう、なんて言えばいいかわかんないんですけど...完璧な小説でした (2020年4月25日 18時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
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