皇帝と道化師/0-1(side無し) ページ47
「白いゼラニウムの花言葉は」
穏やかな言葉が、寧静なガーデンテラスに溶けこむように紡がれる。両手の中で薔薇の花をぽんぽん出しては消し、出しては消しを繰り返して遊んでいた道化師は、その言葉にふと手を止めた。
皇帝は、ゆっくりとティーカップをソーサーの上に戻す。かちゃり、と小さな音がした。
「『私はあなたの愛を信じない』というそうだよ」
愛の伝道師を名乗る君にしては、面白い皮肉だね。そう言って、彼は楽しそうに微笑を浮かべた。
「……おや、知っていたのですか」
彼を見て、渉は手をくるんと回す。先ほどまで弄んでいた薔薇は消え去り、その手には一輪のゼラニウムが握られていた。
「おかわり、いかがですか?」
その花をテーブルの花瓶に生けてから、彼はティーポットを取る。「お願いするよ」そして、続けてそう言って両手を組んだ。
「さて……どうしようかな」
どこまでも楽しそうに、あるいは悪戯でも考える子供のように___皇帝と呼ばれる彼は、口の端を上げる。
「渉、そっちはどう?」
注がれる琥珀色を見ながら問うと、彼はそうですねぇ、と思案するような間を置いた。
「状況は、あまりよろしくないかと。本人たちは特に問題はないのですが、生徒の中に過激派がおりまして……物理的暴力は何の解決にもならないのに、全く愚かですねぇ」
「そうかな?……裏切り者への処罰は望んだ結果だけれど、あまり派手な行動をとられるのは迷惑だよね。王制でなくなったとしても、僕が統治している学院だ。評判が悪くなると後輩にも面目が無いし……」
そこで、彼は紅茶を一口すすってから、ふう、とため息をついた。
「どうなさるおつもりですか?」
「……こういうのは敬人の仕事だよね」
「Amazing!何とも可哀想な右手の人……☆まあ、彼なら気づいて規制ぐらいは行ってくれるでしょうけど。誰の味方だという前に、彼は学院のために働きますからねぇ」
それはそうと、と渉は長い銀髪を揺らして、座っている彼の顔を覗き込む。
「二人がこれからどう動くか、が問題なのですが。英智はどうお考えですか?」
それを聞いて、皇帝はティーカップを置いた。白い湯気がふわりと立ちのぼって、深いダージリンの香りが漂う。
「……僕はね」
彼が返したのは、質問の答えとは違う言葉だった。
「見たいものがあるんだ」
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とくくくめい - もう、ほんと、この小説の司くんが、まじ愛おしいほど大好きです!!!!!!!この小説に出会えた事が本当幸せです!すごく面白いですハラハラさせられます!!! (2017年8月19日 17時) (レス) id: d661f7493a (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - みかん☆さん» いえいえ、コメントありがとうございます!なるほど……そういう発想もありましたか…!!しかし花みたいに綺麗な噂ではないところが欠点です笑 応援ありがとうございました! (2016年9月22日 18時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
みかん☆ - 鬼龍さん!!火のないところに煙はたたぬとも言いますけど根がなくとも花は咲くとも言いますよ!!(これが言いたかっただけ) 最新のところにコメントじゃなくてすみませんが、更新頑張ってください!応援してます! (2016年9月22日 15時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 月永 巡さん» ギャアアアアこちらにもコメントいただいてたんですね…!今気づきましたありがとうございます!!knightsとのじゃれあいは書いてて楽しいです、嬉しいコメント本当に本当にありがとうございます! (2016年8月29日 16時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
月永 巡(プロフ) - すっっごい好きですこのお話!!!! もっと早く出会いたかったっ...! もうKnightsとの関わりが楽しすぎです(;∀; )!! 大事に読ませていただきますっ(`;ω;´) (2016年8月25日 21時) (レス) id: f2838a14db (このIDを非表示/違反報告)
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