【あんスタ】円舞する騎士と快活の姫君(3)

戦術的シークレット/2(sideゆうた) ページ18

「……そんなの、職権乱用じゃん！」

「職権乱用！？い、いや、確かにそうかもだけどっ！」

立ち上がってわたわたするアニキをもう一度睨みつけると、アニキは静かになった。

リーダーだから、お兄ちゃんだからって納得いかない。俺らはAの友達だった、なら遠ざかるより先に、やるべきことがあるでしょ。

「機を待つんだよ、ゆうたくん？朔間先輩だってよく言ってるじゃん」

無言になって俯いた俺に、アニキは努めて優しい声をかけてくる。機って、と目線を上げると、アニキは目尻を下げてちょっとだけ笑った。

「ゆうたくんの気持ちも分かるよ。……じゃあ、こうしよう！とにかく、Aにはあんまり関わらないようにすること。でも、その裏でAと転校生のどちらが正しいか見極めるってのは、どう？」

名案とばかりにアニキは言うけれど、つまりはどういうことなんだ。要領を得ない顔をする俺に、アニキは続ける。

「もしAが無罪なら、転校生が嘘をついてるってことになるよね？その理由もわからないのに、どちらかを信じるなんて危険すぎるっ！だからゆうたくん、俺たちは中立でいて、二人の善悪を判断しよう」

「でもそれなら、Aにかかわらないようにする必要なんてあるの？」

うんうん、とアニキは頷く。それから、ぴんと立てた人差し指を指揮棒でも振るように揺らした。

「やっぱりそこ気になるよね〜？……実は、なんとなく嫌な予感がするんだ」

「なにそれ、アニキの勘ってこと？」

アニキの勘を信じてないわけじゃないけど、それだけじゃ理由にならない。すると、アニキは「それもあるけど」と言葉を繋いだ。

「Aの噂が事実なら、普通に関わるのは危険。嘘だとしたら、転校生はAを陥れようとしてることになる。そんなAと馴れ馴れしく話してたら、転校生が何かしてくるかもじゃん？」

だから、と言葉をくくったアニキの意見はもっともだった。この人、たまにちゃんとしたことをいうから侮れない。

アニキのくせに、と悪態をつくと、ひどいよゆうたくん！といつものめんどくさいノリがかえってきた。

「でもそれなら、協力しようかな。俺はAの様子を見るから、アニキは転校生の様子を観察よろしく」

「おっけー、共同作戦だね！」

にひっと笑って拳を突き出してくるアニキに、溜息をついて拳を返す。


…………その様子を転校生が見ていたなんて、そのときは思いもしなかった。




「なら、信じこませてあげるわ」

Schwarz・Liebe/1→←戦術的シークレット/1(sideゆうた)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す