【あんスタ】進軍する騎士と爛漫の姫君(1)

灰心喪気/2 ページ45

「れー先輩が？」

朔間先輩といえば、私が唐突にバームクーヘンが食べたくなったとき、近くにあった軽音部に入って「バームクーヘン食べたいですー！」と棺桶ガタガタさせたら、寝ぼけて機嫌の悪い朔間先輩に腕ヘシ折られそうになったことがあった。

けど最終的には、大神先輩を使ってバームクーヘン買ってきてくれたんだよね。たまにお菓子くれるし、おじいちゃん感があって優しいから大好きだ。

その朔間先輩が、ニナのことが好き？

「んー？レイって、そんなのに騙されるようなやつだっけー？」

「……兄者は平和ボケしてるからねぇ。アイツの正体に、気づいてないんだよ」

まあ、確かにニナの演技力は演劇部に匹敵するレベルだから、騙されるのも仕方ないかもしれない。

「でも凛月先輩、作戦としては上々なのではないですか？あの奇人と称される凛月先輩のお兄さまがあちら側となれば、ニナさんも満足して完全に油断するでしょうし」

「でも、それがデメリットなんだよねぇ。俺たちは証拠探しもしなくちゃならないわけでしょ？あの奇人があっちの味方なら、勘付いて俺らの動きも妨害される可能性が出てくる」

司くんのフォローを、瀬名先輩が即座にぶった切った。

「なるほど、なら奇人は味方につけとくべきです？」

日々樹先輩は協力してくれるみたいだけれど、他の皆はわからない。話からして、朔間先輩は完全に敵だ。

すると、月永先輩がゆるく首をふった。

「んーん、いいよ。正直あいつらが味方になっても、心から信じらんないし。ワタルの近くにはあの皇帝がいるからなー、ワタルが皇帝の「差し金」だったら？って考えると作戦の概要は話さない方がいい」

「でも、アタシたちは悪いことをしてるわけじゃないのよォ？あくまで「ニナちゃんハーレム計画」を実行してるだけじゃない」

「ニナちゃんハーレム計画ってダサいわね……」と、鳴上先輩が言ってから呟いた。今言うことじゃないでしょ！私がつけたんだからね！？

鳴上先輩の疑問に答えたのは、凛月先輩だった。

「でも、作戦があんまり広まるのは避けたい。どこでニナの耳に入るかわからないし、それなら俺たちの中だけで遂行したいよね。特にエッちゃんは……何するかわからないから、秘密ね。だから日々樹にも念をおしといて、詳しいことは話さないで」

私は了解です、と敬礼してみせる。……わたるん先輩にはほぼバレてる気もするんだけど。

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