【あんスタ】進軍する騎士と爛漫の姫君(1)

日々樹渉と即興劇/2 ページ27

さて始まりました、夢ノ咲即興劇。
参加者は3名、アイドル養成学校なのに何故か全力で演技力をぶつけ合う私たちの戦いの火蓋が落とされます。

ー私は、青ざめた顔で上を見上げた。

「ひ、日々樹先輩……私、なにも、」

「嘘は」

そう言って、日々樹先輩は私の頭を踏みつける。

「あまり、好ましくありませんね」

………てない。え？なにこれ？
踏まれたと思ったら、踏まれてなかった。日々樹先輩が、私の頭に靴が触れるギリギリのラインで足を浮かせているのだ。
まさに絶妙なバランス能力。体幹を鍛えているのか、日々樹先輩は全くふらつかない。

けれど、ニナの位置からは完全に踏みつけているように見えるだろう。あとは演技力の勝負だ。

「やめてください……」

蚊の泣くような声で呟く。聞こえませんね、と日々樹先輩は救いのない声で切り捨てた。

「どうですか。痛いですか？痛いなら重畳。ニナさんの痛みはこれの比ではありませんよ。頭を垂れて、謝罪しなさい」

頭を踏まれている(設定)ので顔を動かせず、日々樹先輩の顔が窺えない。ただ声だけでも、破壊力は凄かった。

なんたって、聞いているだけで心臓が冷たくなって、刃物にでも刺されたかのように心が痛い。演技だ、と知らないと泣いてしまいそうだ。いや、知ってても泣きそう。パイセンなめてました。

「日々樹先輩、もう止めてください。私なら、大丈夫ですからっ。Aちゃんが、可哀想です……」

弱々しくニナが止めに入る。可哀想だと思うのならさっき笑ってたのは何なんだ。完璧に「ざまあみろ」みたいな顔してたよね君？

「…ニナさんに免じて、今日は手を引きましょう。ですが、次ニナさんに危害を加えるようなら。私は容赦しませんので、悪しからず」

「さ、行きましょうか」と日々樹先輩はニナの肩を押した。えっ、私おいてけぼり？

二人が消えて、私は土を払いながら起き上がる。マジか。パイセン、劇唐突に終わらせたね？？

そのとき、カサリとスカートのポケットの中で何がが擦れる音がした。手を突っ込んでみると、クリーム色のカードが入っていた。

『I'm waiting in a garden terrace.』

ガーデンテラスでお待ちしております。

書かれていたのは、その一文だけ。その下には、日々樹先輩のサインが残されている。

待って、日々樹先輩、いつの間にいれたの？踏まれてた記憶しかないけど？

……時間指定ないし、今すぐなのかな？
とりあえず向かおう、と私はカードをしまった。

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