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スティミュラスと青の訪れ/3 ページ35

「言い返せる度胸があるんだったら、大丈夫だろ。今は上手く話せなくても、誰もお前のことを笑わないようになる。だから、自信持て」

零さんの吊り目がちの瞳が、すっと柔らかく細められる。静かで、穏和な笑みだった。


____もしかして。

都合の良い解釈かもしれないけど、零さんは落ちこんでいた私を慰めようとしてくれたのかな。十中八九違うだろうけど、そう思っても良いのなら____。


じわり、と目頭が熱くなる。誰かが、私の為に何かをしてくれることがあるなんて。

「……さてと、そろそろ戻ろ〜ぜ。もう陽が暮れて、ここからは悪〜い魔物の時間だぞ〜?」

一足早く柵の向こうへ戻った零さんの言葉で、我に返った。滲んだ涙を見られたくなくて顔を伏せる。そのまま柵に手をかけて、私も戻ろうとした瞬間__ふらりと体が傾き、眼前にいた零さんの姿が消える。代わりに視界に広がったのは、茜色に焼けた空と薄い雲の切れ端。遠くで夕陽が金色に輝いて、それから体が宙を浮くような感覚がして____。



「A!」


がくんと、心臓が泡立つような感覚に襲われた。はっとして見上げると、柵の向こう側で焦燥の表情を浮かべる零さん。

「おまっ……何してんだよ!?」

返事をしようとする前に、彼は「いいから喋るな!」と強く言い放つ。それから、足場のない空中で宙づりになっていた私の腕を脱臼しそうな力で引っ張り上げ、そのまま屋上のコンクリートの上に倒れこんだ。

引っ張り上げられた私は、零さんの胸にしがみついたまま微動だにすることが出来ない。それは、屋上から落ちそうになった恐怖に体が凍りついているせいでもあるし、零さんの上に乗っているという事実に固まってしまっているからでもある。

「あ〜、びっくりした……。おいテメェ、鈍臭すぎんだろ〜」

長い息を吐いた零さんは、私の背中をぽんぽんと叩く。大丈夫か〜、と言われて、ついに涙が溢れ出た。ここで泣いたら、零さんの制服が濡れちゃう。それは分かっていたけど、生理的な涙は止められない。

「……っ、ふ……う、」

唇を噛んで耐えようとするけど、ボロボロと涙は止めどなく頰を伝う。零さんの顔は見えないけど、小さく息を吸ったような音だけは聞こえた。

「ごめんなさ……っ……わた、私、」

鈍臭くて、迷惑ばかりかけて、すぐに泣いちゃって。ダメな私で、本当にごめんなさい。

「……謝られる方が、嫌なんだけど」

ばつが悪そうな声と一緒に、零さんはゆっくり私の髪を撫でた。

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まめだいふくもち(プロフ) - こたつさん» こたつさん、ご指摘誠にありがとうございます。漫画などでよく見る表現だったのですが、なにか事件が関連していたのですね…。勉強になりました。つきましては、その表現を修正させていただきます。コメントありがとうございました! (2017年10月29日 15時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ - ドラム缶に東京湾というワードは某事件を連想させるので修正した方が良いのではないでしょうか? (2017年10月29日 9時) (レス) id: ae4fce482d (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - 抹茶粉さん» 抹茶粉さん、コメントありがとうございます!とてもとても嬉しいです…!私もれいさんにプロデュースされたい!という思いから書き始めたので、光栄です笑 (2017年8月2日 22時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶粉 - 零さんにプロデュースされるなんて夢見たいです…!もう始まりから胸のきゅんきゅんが鳴り止みません!笑 続き楽しみにまってます!更新頑張ってください! (2017年7月26日 16時) (レス) id: 634a139de2 (このIDを非表示/違反報告)
まめだいふくもち(プロフ) - ベリーさん» ベリーさん〜!ご指摘ありがとうございます。修正してまいりましたのでご確認ください。そして、またこのような事態があればお知らせください。 (2017年1月14日 13時) (レス) id: 8f73a5bd97 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まめだいふくもち | 作者ホームページ:http://ない  
作成日時:2016年10月28日 0時

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