【あんスタ】プルメリア・ナハトムジーク〈2〉

デート/1 ページ24

そしてあっという間に零さんとの約束の日、当日。

あの日の後、嵐ちゃんに(結構強引に約束を取り付けられ)朝早くからメイクをしてもらって、髪型まで整えてもらってまるで別人になった私は待ち合わせ場所の駅前で固まっていた。

だって、すごく落ち着かない。学校以外でどこかにお出かけするのなんて親と出かけるぐらいだったし、なんたって頭のてっぺんからつま先までいつもとは全然違うのだ。

くるんとあげられた睫毛、頰に柔らかな赤みをさすチーク。極め付けに唇に乗せられた、「男ウケの良い」チェリーピンクのリップ。ベージュのシャツワンピースに、派手すぎないながらもアクセントとなるネックレスにイヤリング。……以上、嵐ちゃんの説明の受け売り。

でも、メイク、変じゃないかな。嵐ちゃんのことを信頼していないわけじゃなくて、私自身があまりにも不細工すぎて似合ってないんじゃないか。髪型も、ヘアアイロンとか何とかいうやつでふわふわに巻かれたんだけど、私がこんなおしゃれな髪型していいのかな。ああ、なんか、すごく見られているような気がする。視線、怖い。帰りたい、なんかお腹痛くなってきた。

「お、は、よ♪」

その瞬間、背中をばんっと叩かれた。ひいっ、と口から情けなさすぎる引きつった声が漏れ、反射的に振り向くとそこには。

「あはは、面白れ〜悲鳴！」

私の方を見てケラケラ笑う零さんの姿があった。

「れ……っ！」

じんじんと痛む背中のことで抗議しようと声をあげると、零さんは「ん？」と首を傾げた。その表情があまりにも綺麗で、言葉に詰まる。

「……お、おはようございます」
「うん、おはよ。早速だけど、あっちの日陰行っていい？俺、ちょっと日差しダメでさ〜」

たしかに、よく見ると彼の顔は若干青白かった。しかし、それが気にならないほど相変わらず端正な顔立ちをしている。艶のある黒髪が映える、しみ一つないきめ細やかな肌。高い鼻梁とくっきりとした二重。どこか気だるげな赤い瞳を縁取る、長い睫毛。彼が身につけているのはシンプルな開襟のシャツと細身のズボンだけなのに、逆にそのせいか顔とスタイルの良さが引き立っている。本当に、羨ましいぐらいだ。

思わずじいっと眺めていたら、肩をぐいと引き寄せられた。ほら、こっち。何でもないように言われて、心臓が高鳴る。この人、距離が近いというか、普通にこういうことするから……！

「そっ……それで、今日はどこ行くんですか？」

「え？決めてない」


……またプラン無しなんですね。

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