望まれない英雄肆【戦国BASARA】 (ページ9)

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８初めての痛みページ9

「“冥独楽(ベイゴマ)”ッ！！」

と、その時。

雄久君が懐から出した部品を繋げていき、巨大な鉄の輪っかを作ったかと思えば、迫って来る無数の矢に向けて投げた。

“冥独楽(ベイゴマ)”、と雄久君が言ったそれは、回転しながら飛んでいき、矢を次々と弾いていく。

けれど、それも無数の矢の前にはあと一歩及ばず。
取りこぼした矢が、無慈悲に雄久君に襲いかかる。

──だから。

───何、子供に守られてんだよ、私は！

気がついたら、私は雄久君の前に飛び出していた。

この時、私は少し甘い考えを持っていたのかもしれない。

人さらいに襲われた時も、小田原城で囲まれた時も、忍に襲われた時にも。

私は無事で、無傷だった。

だから今度も無茶しても大丈夫、そんな思いが何処かにあったのかもしれない。

愚かだった。

いつもそばに居てくれた常真が、今は居ないということに気が付いていなかった。

トストス、という軽い音が続けて聞こえる。

音の軽さとは裏腹に、頭を覆った両腕に激痛が走る。

冷たく鋭利な刃物達が、肌と肉を貫く感覚。

貫かれた場所から湧き出る、熱い自分の血。

ああ、痛い。

痛い痛い痛い。

痛い嫌だ痛い熱い嫌だ痛い痛い痛い。

その痛みから逃げるように、私の意識は遠のいていった。

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～常真side～

「エリさん！！！！」

雄久の耳をつんざくような叫びが聞こえた。

体を起こしてあちら側を見ると、腕を中心に多量の矢を受けて倒れるエリが見えた。

「……！」

俺が間違っていた。

考えてみれば当たり前だ。
ここは毛利の領地、奴の隙が無い理由はない。

今、俺がとるべき最善の行動は撤退だ。
遠目から見ても、あの数の矢はまずい。

だから、その為に一刻も早く毛利軍の隙を作る必要がある。

「雄久！敵の注意を引きつけながらもう一度鏡を狙え！」

雄久は俺の方を睨み返すが、すぐ指示に従う。

大鏡に向かう雄久を弓兵達が狙い撃つ。
不意打ちでない攻撃なら、奴は避けられる。

毛利軍は、良くも悪くも毛利元就に忠実だ。
恐らく、『毛利元就が動けない間、大鏡に向かう敵を撃て』のように命じられたのだろう。

しばらくは『もう倒れた敵』であるエリよりも『大鏡に向かう敵』の方を優先するはずだ。

時間はない。俺も急がないとな。